最初に、SOTENが開発された背景をおさらいしておこう。2020年1月、経済産業省が国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)を通じて、「安全安心なドローン基盤技術開発」事業を公募し、同年4月よりACSLがリーダーをつとめる5社のコンソーシアムによって、国産のセキュアな小型空撮ドローンの開発が進められてきた。同事業の成果として、2021年12月に商品化されたのがSOTENである。
「安全安心なドローン基盤技術開発」事業の背景には、国家レベルでのドローンのさらなる用途拡大への期待と、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現に向けたサイバーセキュリティ戦略がある。
ドローンの用途拡大について具体的には、すでに広く活用され始めている農薬散布、空撮、測量、インフラの点検などのほか、今後は物の輸送や、特に災害時の広範な被災状況確認、火災時の被災者の有無確認などでは、迅速な対応手段としても期待されている。ドローンは、人手不足や少子高齢化の解決策として、また新たな付加価値の創造を実現するという点でも注目されており、国が掲げる「Society5.0」の推進においても、重要な位置付けのひとつだ。
一方で、2018年7月27日に「サイバーセキュリティ戦略」が閣議決定された。このなかでドローンについては、「サイバー攻撃による不正操作によって、人命に影響を及ぼす恐れがある」と指摘されており、そのような事態が生じないように、さまざまな主体が連携して多層的なサイバーセキュリティを確保することが求められた。また、2020年2月には5Gやドローンのサイバーセキュリティを確保しつつ導入を促進する法案が可決、2020年9月に政府は、「調達はセキュリティが担保されたドローンに限定」「すでに導入されているドローンについても速やかな置き換え」とする調達方針を公表した。
このような中、ACSL、ヤマハ発動機、NTTドコモ、ザクティ、先端力学シミュレーション研究所の5社は、コンソーシアムを組んで「政府調達向けを想定した高い飛行性・操縦性、セキュリティを実現するドローンの標準機体設計・開発及びフライトコントローラー標準基盤設計・開発」という委託事業と、「研究・開発される標準仕様に合致する機体、並びに主要部品の量産・供給・保守の体制構築及び継続的な性能・機能をブラッシュアップする体制の構築」という助成事業に取り組んだ。