データの一部はアトランタ地域で撮影されたようだ。だが、アトランタ警察は『WIRED』US版の取材に対し、映像は管轄地域のものではないと説明している。ジョージア州パトロール隊にもコメントを求めたが、記事公開時までに返答はなかった。
ジョージア州パトロール隊の航空部門はヘリコプター15機と軽飛行機「セスナ 182」1機を保有し、捜索や救助などに用いている。同部門のウェブサイトには、「航空写真」や「航空監視」といった活動も挙げられている。
「大規模な監視活動が、なぜ社会の安全性を高めず低下させるのか。その明らかな事例と言っていいでしょう」と、デジタル権の擁護団体「Fight for the Future」副代表のエヴァン・グリアーは語る。「企業も政府も、収集した機密データの保護がひどく苦手なのです」
ここにきて警察のドローンが大きく注目されているのは、屋内飛行を含む特にステルス性の高い監視や新しいタイプの行動が可能であるなど、新世代の航空機の象徴でもあるからだ。一方で捜査当局は、上空からの調査と監視に何十年も前からヘリコプターを用いている。
だが、DDoSecretsが公開した映像は、地上に近い場所において極めて鮮明かつ細部にわたる映像を撮影する際に、いかにヘリコプターに搭載されたカメラが役立つのかを示している。それにヘリコプターなら、基本的なクアッドコプターやその他の安価なドローンよりも重い監視装置を搭載できる。
「警察のヘリコプターは交通違反を取り締まるためのものだと思われていますが、それだけではないのです」と、DDoSecretsのベストは説明する。「監視されていることに気づいていない人々を警察が監視できるような技術を、ヘリコプターは搭載しています。警察の技術にすでにどのような能力があるのか、近い将来どんなことができるようになるのかを、国民が理解することが重要です。理解していなければ、十分な情報に基づいた議論も決定もできません」
AIとビッグデータがあらゆることを永遠に覚えている現代。データはあなたを丸裸にし、ビッグデータとなって社会の誰かに有用な情報になる──。プライヴァシーと安全・利便性のトレードオフという最重要な問いの相克をレポートする。
ヘリコプターが監視活動にこれほど広く利用されている事実は、プライヴァシー保護活動家のドローンに対する懸念を強めることになる。ドローンなどの無人航空機はヘリコプターよりはるかに低価格で購入も操作も容易だが、それでいてさまざまなセンサーを搭載できるからだ。
「カメラと望遠技術は常に低価格化が進み、軽量になっていきます」と、シンクタンクであるケイトー研究所で新興技術を専門とするディレクターのマシュー・フィーニーは言う。「ドローンのような航空機は、カメラやスティングレイ[編註:携帯電話の基地局になりすます盗聴デヴァイス]、赤外線カメラ、顔認識ソフトといった監視ツールを搭載するプラットフォームとして、常に考える必要があります」
流出したヘリコプターの監視映像についてDDoSecretsのベストは、その多くが2019年のタイムスタンプが残っているとした上で、警察は保存期限を重要な優先事項にすべきだと指摘する。警察のボディカメラ映像を扱う際の削除指針の必要性についても、同様の議論がある。