日本では昨年のドローンによる農薬の空中散布の操縦者数が1万人を超え、農林水産省もドローンによる農薬散布の目標を100万ヘクタールに掲げるなど、ドローンを使った農薬散布がどんどん浸透してきていますね。
一方、農薬に対して規制が厳しいヨーロッパでは、昨年5月に「欧州グリーンディール政策」が欧州委員会によって発表され、2030年までの10年間に「農薬の50%削減」、「化学肥料の20%削減」と「有機栽培面積の25%への拡大」という目標が掲げられています。
そもそも農薬を撒くことを良しとしない文化の中で、害虫を駆除するまったく新しい方法を開発しているオランダのドローンベンチャーの取り組みを紹介します。
もくじ
オランダのPATS Indoor Drone Solution社が提供するドローンは、手のひらサイズのミニチュアドローンです。室内栽培のグリーンハウスの害虫駆除に特化しており、農薬を撒くのではなく、害虫を見つけると一直線で害虫を追いかけ、自身の羽で害虫を木っ端微塵に粉砕するという荒業で駆除します。
PATS社の紹介動画の46秒辺りからご覧ください。(動画の冒頭部分は蛾の幼虫などの映像がたくさん流れるので苦手な方は閲覧注意です)
現在PATSのソリューションを導入している無農薬農園では、毎日5〜6人のスタッフがバトミントンのラケットをもって巡回していたそうです。そうして退治できた蛾は、最大でも1日60匹だったので、このテクノロジーには大変期待しているそうです。
このドローンの操縦は完全自律飛行で行われています。PATS Base Stationと呼ばれるステレオビジョンカメラを搭載した機械が、害虫とドローンの位置を正確にトラッキングして、司令塔のようにドローンを蛾の飛行ルートへと誘導します。
ちなみに発射台には無線の充電システムが備わっており、ミッションを終えて戻ってきたドローンは、自動で充電がされるようになっているそうです。
さらにPATS Base Stationでは、見つけた虫を害虫か益虫かを判別し、害虫のみをドローンで迫撃するように指示します。例えばてんとう虫は農作物についているアブラムシを食べてくれますし、ミツバチは農作物の交配を手伝います。事業主はこれらの益虫をお金を払って購入しているため、蛾のような害虫として処理されてほしくはないためです。
また、こうして集まった害虫や益虫の撮影データをもとに、害虫の活発な活動時間の傾向や、個体数などのレポートを作成し、より省人化した方法でより正確に害虫の管理が出来るようになっていくそうです。
©︎OPTiM AGRI DRONE
ドローンを用いた害虫駆除の方法で最もメジャーなのは農薬散布である、ということに変わりはありませんが、日本でも農薬を使わずして殺虫をする方法があります。
佐賀県の農林水産部と佐賀大学農学部、オプティムが三社連携協定を結び、夜間の殺虫を行っています。三者が開発した「アグリドローン」は、吊り下げたライトで虫をおびき寄せ、たくさん集まった所を高電圧で一気に駆除することができます。
この、夜間にドローンを飛行させて害虫を駆除する実験はなんと世界で初めて成功したそうです。
国連の報告書によると、世界中で生産される農作物の20〜40%が害虫によって出荷できない状態になっているそうです。日本も欧米の農薬規制の厳格化の波に習い、ゆっくりとではありますが徐々に規制を強化しています。
農薬散布が非常に注目されている日本のドローン業界ですが、もう少し先の未来まで見通すと、このような取り組みが日本でも流行るのかもしれませんね!
20代はテレビ番組制作会社のADで、ゴールデンタイムの情報バラエティ番組を担当。月給16万&週休0日から、気づけば外資系企業の日本法人を預かる身に転身。ドローンの会社なのに、ドローン飛ばせないことで有名。ニックネームはドローン業界の「おしゃべりバズーカ」。海外のドローンニュースをお届けします!