ラトビアの国防大臣のアーティス・パブリクス氏がトルコの軍事企業のバイカル社を2021年5月に訪問し、同社が開発、製造している軍事ドローンを購入する意向を見せた。
パブリクス氏は「ラトビアにとってトルコとの軍事的協力はとても重要です。トルコはNATOにとってもラトビアにとっても軍事的に重要です。特にドローンは今後のラトビアとNATOの軍事においても、台頭する脅威と対峙するのに重要です」と語っていた。またパブリクス氏は「トルコの軍事産業の研究開発は世界でも最高の水準にあり、NATOにとっても重要です」とコメントしていた。
トルコから軍事ドローンを購入するNATOの国はラトビアがポーランドに次いで2か国目である。ポーランドもバイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」を24機購入。ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領がトルコを訪問していた際に購入し、2022年までにポーランドに納品される予定。
トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいる。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。またロシアと対峙しているウクライナにも軍事ドローンを提供しており、ロシアにとっても大きな脅威になっている。
攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。
特にロシアにとっては周辺の中小国が攻撃ドローンを大量に導入することは脅威である。NATOおよびEU加盟国で初めてトルコから軍事ドローンを購入したポーランドの標的は明らかにロシアであり、ラトビアにとっての脅威も同じくロシアである。
「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。そして軍事ドローンを活用すればポーランドやラトビアのような中小国であってもロシアのような大国に対して非対称な戦いが可能となるため、抑止力にもなり、バランスオブパワー(勢力均衡)を変える可能性がある。
▼ラトビアの国防大臣が訪問したことを伝えるバイカル社のツイッター
▼ラトビアの国防大臣の返信のツイート
▼バイカル社幹部の感謝のツイート
▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」でのアゼルバイジャンによるアルメニアへの攻撃
▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」