日本政府は24日、東京新聞の提出した「敵基地攻撃能力」を巡る質問について書面で以下のような回答を行いました。
実はこれは従来の政府見解そのままの内容です。
ここで言う「攻撃的兵器」とは、「性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる」という、長い前提条件を全て満たす狭い範囲のものだけを指します。
一言で言えば「長射程の核兵器」のことです。政府は直接そう言いたくないので、わざと迂遠な言い回しを用いています。
以上の条件を全て満たす「攻撃的兵器」は保有しない、つまり通常弾頭の長射程兵器は保有できると言ったに等しいのです。さらに自国国土で起爆する短射程の核兵器も保有できるという意味にも取れる内容です。
二つの道の可能性に含みを持たせた伝統的な政府見解をそのまま述べた岸田首相の回答は、「敵基地攻撃能力」について何も答えていないのと同じです。岸田首相の回答の真意としては「長射程の核兵器を保有する考えはない」と答えただけだからです。
例えば現在自衛隊で開発中の「島嶼防衛用高速滑空弾」は事実上の極超音速滑空ミサイルであり、弾道ミサイルと同等以上の戦術的価値を持つ兵器ですが、これの射程を中距離級に延伸しても通常弾頭ならば合憲という扱いです。
また仮に次期戦闘機(仮称F-3)の航続距離を幾ら伸ばしたとしても長距離戦略爆撃機にはならないので、合憲です。第二次世界大戦後の長距離戦略爆撃機の「戦略」という言葉は、核爆弾を運搬できるということを意味します。
「いずも」型ヘリコプター護衛艦にF-35B垂直離着陸戦闘機を搭載する、いわゆる「軽空母化」の改装については明らかに攻撃型空母ではないので合憲です。小さな軽空母を攻撃型空母と呼ぶことは通常はありません。
しかも日本政府は空母について「核攻撃機」を載せない限り攻撃型空母とは認定しません。それ以外は「性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる攻撃兵器」という条件に該当しないからです。
「極めて大きな破壊力を有する爆弾」とは「大量破壊兵器の爆弾」という意味です。核爆弾としか解釈できません。非常に政治的な隠語だと言えるでしょう。日本政府はこの説明を何十年と続けてきたのです。
そして本当の意味で「核攻撃型空母」と呼べる存在は、アメリカ海軍で1949年にキャンセルされて未完成に終わった幻の空母「ユナイテッド・ステーツ」くらいしかなく(巨大な核攻撃機を搭載するための専用設計がされていた)、最初から既に存在しないものが日本国憲法第9条における保有は許されない兵器の線引きとして設定されています。つまり線引きなど無いのと同然なのです。
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