ariaは2013年に発表され、現在海外で販売されているオールイン型のミュージックサーバー。デザインされたデスクトップPCのような筐体には最大4TBのHDD/SDDが搭載され、音楽プレーヤーとして、サーバーとして、ストリーマー(音楽ストリームの再生)として、リッパー(CDリッピング/保存)として機能するオーディオ・ハイエンドユーザー向けのシステムだ。PCMにおいては最高で32bit/384kHz、DSDでは5.6MHzまでの再生が可能。操作はiPadまたは、Andorioidタブレット(Android版は間もなくリリース予定)を用いて行なうことを前提としているため、本体には基本的に操作ボタンなども持たない。完全にPCレスで操作できることを特徴としており、PCが苦手な人でも誰でも簡単に使えるという。DLNAにも対応しているので、ネットワーク上にある各種オーディオ機器と連携させることも可能だ。
iPadアプリで操作一方、2014年には、光学ドライブを除いたよりコンパクトなシステムであるaria miniもリリースされている。スペック的にはS/PDIF出力やAES/EBU出力などがない、という点はあるが、機能的にはリッパーとして使えないだけで、ほぼ同等。国内では、まずこのaria miniを年内に投入し、ariaはファームウェアなどがアップデートし、DSDの11.2MHzなどに対応する来年春に発売する予定だ。価格はまだハッキリしないがリニア電源をセットにし、2TBのHDDを搭載したaria miniが30万円程度、同じくリニア電源をセットにし、4TBのHDDを搭載したariaが70万円程度になる模様だ。高額な機材だが、詳しい話を聞いてみた。
「aria min」は、光学ドライブを搭載しない小型モデル――まずは、DIGIBITという会社について簡単に紹介をお願いします。
Perez:当社は2008年に設立した、スペイン・マドリッドにある会社です。私自身は、もともとIT・エレクトロニクス産業で働いており、モトローラのスペイン支社の設立を行ないゼネラル・マネジャーとして従事し、インテルグループのDialogicという会社ではCEOを務め、ASCADというCAD/CAMの業界団体やAPELというeラーニングの業界団体の会長などを務めてきました。が、それらの仕事をスッパリと辞め、2008年に完全にホビーの会社であるDIGIBITを設立しました。
それまでも音楽、とくにクラシックを聴くのが大好きで、趣味でレコードを聴いたり、オーディオ機器を揃えていました。が、手持ちのCDをリッピングして自分の音楽データサーバーを構築していく中、自動的に割り振られるタグ情報が、あまりにも酷いことに辟易としたのです。そこで、クラシック音楽に特化する形で、曲情報のタグ付けをするSonata Databaseというものを構築する会社として、DIGIBITを作ったのがスタートです。完全に自分の趣味が目的の会社ですね。コツコツとデータ入力をし、現在存在しているといわれるクラシックのCDアルバム75,000枚のうち、98%を網羅するデータベースとして仕上げることができました。
――最初から、ariaのようなオーディオ機器の開発が目的ではなかったんですね?
Perez:その通りです。ただ、このデータベースだけではなかなか商売にならないので、2013年初頭に大きくビジネス転換をし、最高のコンピュータ・オーディオ機器の開発へと舵を切ったのです。そして同年5月、aria music serverおよびOPPO BDP105をaria music server化するためのキットを発表し、世界中のユーザーから注目を集めました。それはコンピュータを使わずに簡単に操作ができるミュージックサーバーで、CDをセットすれば自動でリッピングするとともに、前述のSonata Databaseに照らし合わせることで、ほとんどのクラシックアルバムに、正確なタグ付けができる機能、そして非常に高品位な性能が受け入れられたからだと思います。もっとも私が欲しいものを作っただけの話なんですがね。
村井:ariaユーザーは世界的にも50代、60代の方が多いそうです。私自身もそうですが、膨大なCDライブラリを持っているものの、CDだと文字が小さくて読みにくく、目的の曲を探し出すのも大変です。でも、ariaを使えば自動でデータベース化してくれて、あとはiPadで操作できるのでいいんですよ。iPadなら文字の拡大も自由自在ですからね。先日は丸2日間以上かけて、私の持っているすべてのCDをariaでリッピングしましたが、快適ですね。ユーザーニーズから出来上がった製品だと本当に思います。
CDをリッピングして、自動でデータベース化。iPadで操作する――このariaおよびaria miniは384kHz/32bitまでのPCMに対応し、5.6MHzのDSDもサポート。さらに来年にはDSD 11.2MHzにまで対応するとのことですが、海外でこうしたハイレゾ・オーディオのニーズはあるんですか?
グローバルのデジタル音楽売上('09年~'14年)出典:IFPI(国際レコード産業連盟)Perez:いま音楽産業は、世界的にも衰退しているといわれますが、世界中の音楽のデジタルデータ、つまりCDのようなパッケージでなく、ダウンロードを中心とした音楽コンテンツの売り上げは2009年以降、右肩上がりで伸びています。当初はMP3などの圧縮音楽が中心でしたが、それが非圧縮にシフトしつつあり、今後はハイレゾへと進化していくと思います。ハイレゾのマーケットとしては、現在日本が進んでいることは事実ですが、今後その流れは世界的に広がっていくことは間違いないと確信しています。
村井:このデータはIFPIというデジタルミュージックの世界的な業界団体です。このデータを見る限り、年率15%程度で伸びているのは注目すべき点だと思います。先ほどのJuan Perezさんと話をしていたら「日本では、まだCDが頑張っているけれど、ヨーロッパではCDはもう死んでいる」と言っていましたからね。
――国内であれば、e-onkyou musicやOTOTOYといったところから購入すれば、聴けそうですね。そのダウンロードは、aria本体でできるのですか?
村井:ダウンロード自体はPCで行なって、USBメモリなどで転送する形になります。ちなみに楽曲によってはライナーノーツなどブックレットがPDFで提供されているケースがありますが、これもフォルダごと転送してしまえばよく、曲目を見るとクリップのアイコンが表示されるので、これをタップすればPDFが開けるようになっています。
PDF形式のライナーノーツも見られる――ariaにとっての競合って、どんな機材になるのでしょうか?
Perez:直接的な競合はないと思っています。ただ、実際のビジネスで一番のライバルとなるのはLINNの製品ですね。LINNの場合はスピーカーまで持っているので、トータルでシステムが組めるのが魅力だと思います。でも、ariaの場合、1台で数多くの機能を装備するとともに、アクティブスピーカーで手軽に高品位な音が出せるのと同時に、手軽にハイレゾ・サラウンド環境が構築できるのも大きなポイントです。