今回の試行の舞台となった奥多摩町の峰集落は、奥多摩町の中心部にある奥多摩郵便局まで約15km、車で約30分かかる。また、標高約550mの奥多摩フィールドに対して、峰生活改善センターの標高は約790mと、約240mの標高差がある。奥多摩郵便局では峰集落をはじめ管内にこうした山間地の集落を抱えており、郵便物の配達にはこうした集落を回って戻って来るのに半日がかりだという。さらに冬季になると路面の凍結や降雪があると、車やバイクによる配送が難しくなり、ときには配達員が坂道を歩いて上って郵便物を届けることにもなるという。
こうした課題に対して日本郵便では早くからUAVやUGVを使った配送に取り組み、今後の人手不足や配送の効率化を目指している。2020年3月には同じ奥多摩町で、奥多摩郵便局から戸宅にUAVが直接郵便物を届ける試行を行っている。ただし、UAVが直接戸宅に荷物を届けるには、着陸場所や安全性といった面で課題も多い。そこで今回はUGVと組み合わせることで、戸宅まで直接届けることに取り組んだ形となった。
日本郵便の小池信也常務執行役員は「日本で初めてドローンと配送ロボットを組み合わせ実際に配達に取り組んだが、安定した稼働ができた。今後もこうした実験を繰り返しながら、実用化に向けて取り組んでいきたい」と今回の試行を評した。
またUAVを提供しているACSLの鷲谷聡之社長は、「配送ネットワークの高度化に関する取り組みを継続してきた中で、そのマイルストーンとして、山間地域においてドローンを使って高度方向の利活用をしていただけることが示せた。今後は2022年のレベル4実現に向けて技術開発を進め、2023年以降の社会実装に向けて取り組んでいきたい」と述べた。
さらにZMPの谷口恒社長は「これまでの都市部での配送ロボットの走行は、車や人の交通量は多いものの、歩道と車道が整備されている。しかし今回の試行ではその区別がない道路を走る。路側帯を歩道とみなした環境を走行するという新しい技術的なチャレンジができた。また、坂道でも問題なく稼働することを確認でき、配送ロボットの技術的な課題はすべてクリアできた」と説明した。