配信
若い女性向けの商品を企画、販売するときには何が大切なのでしょうか。嵐のように来てすぐ去っていったタピオカブームを見てもわかるように、Z世代向けのマーケット向けの商品をつくるのはとても難しいです。女子高生・女子大生のトレンドをつかんで人気商品を企画し続けてきたヒットメーカーが「カワイイの世界」をビジネスパーソン向けに解説した『カワイイエコノミー』(日経BP)より、うつろいがちに見える「カワイイ」とそれを売るにはどうしたらいいかがしっかりわかるようにお伝えします。◇ ◇ ◇
写真:NIKKEI STYLE
私たちのところには、さまざまな企業から「自社商品を若い女性に広げたい」「女の子向け市場に商品を出したい」といった相談をいただくことがあります。こちらとしては、内容を聞くと、正直、困ってしまう案件が少なくありません。「これを女の子が欲しいと本当に思っているのですか」と思わず聞きたくなる商品やサービスが案として上がっているからです。いちばん多いのは、すでにある商品を女性にも広げたい、というものです。たとえば、中高年層を意識した雑誌があるとします。これを、若い女性に読ませるのは難しいと思います。もちろん、その中に若い女性をしっかり意識したコンテンツが載っているなら別です。もともとそのターゲットが使うことを念頭に置かれてないものは、残念ながら難しいのです。このように、自社の強みの延長線上にあるサービスや商品をどうにか売りたい――。これは多くの日本企業、とりわけ大きな会社が長年煩っている病気です。顧客の声ではなく、つくり手の理屈を優先してしまう症状でしょう。しかし、これらは「つくり手がいいと思うものをつくる」思想です。マーケティングの言葉で言えば、企業がつくりたいものをつくる「プロダクトアウト」です。プロダクトアウトは、高性能なものを、プロの確固たる視点でつくれるというメリットがありますが、この視点のみだと危険だと私たちは考えています。女の子の気持ちが一切考えられていないものを売るのは難しい、ということを大前提として知っておくのはとても大切です。テクノロジーからの提案もよく見られます。これも戦後の高度経済成長期の思想を引きずっています。「いい性能のものをつくれば売れる」という時代がかつてありました。それは経済成長が右肩上がりで人口も増え続けたから通用したモデルです。そもそも、現代ではインターネットの普及や所得の伸び悩みで多くの価値観がさまざまに生まれ、「いいもの=技術力が高いもの」ではなくなりつつあります。とりわけ、女の子は先端のテクノロジーを必ずしも求めていません。スマホのカメラにしても、とにかく高性能のカメラを求めているわけではなく、かわいく写るカメラを求めています。女の子は変化を常に求めていますが、進化は必ずしも必要としていません。
1/2ページ