人工知能(AI)を利用して自動的に標的を識別し、攻撃を行う。「殺人ロボット」とも称されるのが自立型致死兵器システム(LAWS)。各国が開発を進め、将来的には多くの犠牲者を出す恐れがあるにもかかわらず、定義をはじめ開発や所有、使用に関する規制はない。国際的な規制の取り組みを急ぐべきだ。
LAWSを巡っては、2013年に国際NGOが規制を訴え、125の国と地域が批准する特定通常兵器使用禁止条約(CCW)の枠組みで規制に関する議論が続けられている。ただ、昨年12月にあったCCWの第6回再検討会議でも合意には至らず、協議は先送りされた。会議に先立つ専門家会議での協議では、開発を進めるロシアなどが規制に強く反発し、意見を集約できなかったという。
専門家会議は今年も開かれることは決まったが、協議進展の展望は開けていない。19年にはCCW締約国会議で、民間人を含む無差別攻撃などを禁じる国際人道法をLAWSにも適用し、使用には人間が責任を持つとの指針を各国で合意したものの、その先の具体策は白紙の状態だ。
一方で、LAWSの脅威は現実のものとなりつつある。
昨年出された国連安全保障理事会専門家パネルの報告書は、内戦下のリビアで20年春、LAWSが使用された可能性を指摘した。名指しされたのは、トルコの軍事企業が製造した回転翼で飛行するドローン型兵器。軍事企業側は自立型を否定するものの、報告書は顔認証技術で敵を識別し、爆弾などを搭載し兵士や輸送車両を追尾、攻撃した可能性があるとしている。
ロシアをはじめ、軍事大国の米国、中国は巨額投資してLAWSの開発を進めているとされる。国際NGOの訴えから10年目となるが、各国の無人機兵器がLAWSに発展し、紛争地域で使用される可能性は高まっている。
兵器規制を巡っては、日本も批准したクラスター(集束)弾禁止条約に米中ロなどは加わらず、クラスター弾が今も使われているという現実がある。それでも、条約というルールがなければ、多くの国での製造、使用禁止にはつながらなかっただろう。
日本政府は、LAWSにつながるAIやロボットの研究開発は阻害したくないとの思惑を抱えつつ、「人間が全く関与しない、完全自立型の殺傷兵器」については開発しないとの立場を取る。
新型コロナウイルス禍で実現に至らなかったものの、外務省はLAWSのルール作りに向けた国際会議の開催を企図したことがある。安全保障上の緊張が世界各地で高まる中、現状では新型兵器の野放図な投入を許すことになる。平和を希求する国として、政府は大国の論理によらず、使用禁止や限定使用にとどめるといった国際ルール作りの議論をリードしてほしい。