このような社会環境の変化は、社会を構成する企業にも、自社サービスのデジタル技術への対応や、DX推進への取り組みという形で影響を与えている。企業がDX推進に取り組む代表的な理由は、「デジタルマーケティング・プラットフォームビジネスへの対応」「デジタル技術を使った労働生産性の向上」である。
「デジタルマーケティング」とは、インターネットやIT技術など「デジタル」を活用したマーケティング手法のことである。例えば、企業対一般消費者取引(BtoC)の領域では、スマートフォンやIoTデバイスから収集したビッグデータをAIで解析し、解析結果から利用者個々のニーズを把握し、デジタル・プロモーションを行うことなどの試みがなされている。
デジタルマーケティングをさらに加速させる取り組みとして「プラットフォームビジネス」がある。昨今、「プラットフォームビジネスの立ち上げ」や、「プラットフォームビジネスに参画する」ことで成長を遂げる企業も増えてきている。
「プラットフォームビジネス」とは「プラットフォーム参加者による商品・サービスに関する情報の交換やビジネスマッチングを可能とするビジネスモデル」であり、例えば、楽天やAmazonなどが該当する。プラットフォームビジネスは、「メーカー・卸売業・小売業などの定常的な川上・川下間の取引」や「ECサイト経由のサプライヤーとコンシューマーの直接取引」とは異なり、プラットフォーム上の商品・サービスに関わる情報をさまざまな観点から索引・参照し、取引の判断に活用できる点に特徴がある。
利用者の立場で考えると、プラットフォームにおける情報は、取引先の営業担当や個社のECサイトから入手する情報に比べて広範囲で客観性が高い。ここにプラットフォームの優位性があると考えられる。
このように企業が取引機会を拡大するために、デジタルマーケティングやプラットフォームビジネスに対応することは重要である。そのためには、自社データの統合管理環境の整備や、プラットフォームから取得するビッグデータを解析する技術の確立が不可欠である。
「デジタル技術を使った労働生産性の向上」とは、少子高齢化による労働力人口の減少見込みを踏まえ、既存の労働力人口の生産性を向上させることであり、限りある労働力人口の能力を最大化することで、生産能力の維持向上を図る取り組みである。具体的には、手作業をデジタル化により自動化することや、リモートワーク導入・働き方改革の充実により「家庭で育児中の人」や「高齢や療養中などによりフルタイム勤務できない人」などに就労機会を提供する取り組みを意味する。
そして「デジタル化による自動化」の範囲・効果をより高めるためには、外部取引先から取得する情報のペーパーレス化や、社内業務プロセスを標準化し、自動化可能なプロセスに転換させることが必要である。ペーパーレスへの取り組みは、在宅勤務社員が出社せずとも必要な業務情報にオンラインでアクセスするためにも必要であり、コロナ禍の影響もあり、こうした対応がますます求められている。