個人の趣味として楽しむだけでなく、空撮や点検、測量、リモートセンシングなどのビジネスとしても普及が進むドローン。ニ「趣味ではじめてみたい」「ビジネスとして取り組みたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そこできになるのが「ドローン免許」のお話。今回の記事ではドローンやUAV(無人機航空機)に関する免許について、そもそもどんな性質のものなのか? 本当に必要なのか? 不要な場合はあるのか? どんな種類の免許があるのか? といったギモンを徹底解説していきます。
もくじ
免許という単語の辞書的な定義は「ある特定の事を行うのを官公庁が許すこと。また、法令によって、一般には禁止されている行為を、特定の場合、特定の人だけに許す行政処分」とされてります。少しわかりやすく言い換えると「ライセンス保持者以外には違法となる行為をすることを許可すること、もしくはそれを示す書類」という意味です。身近な例で言うと「運転免許」があり、これは各都道府県の公安委員会が認定するものです。また、これを所持せずに自動車などを運転することは法律違反にあたり、罰則の対象になります。
一方でドローンに関してはこのような認定を直接行なう官公庁は存在しませんし、「国土交通省が航空法にもとづきドローン免許を発行する」ということもありません。そのため、ドローン免許は存在しないのです。
ですが、インターネット上や一般的な会話の中で「ドローン免許」という言葉を目にしたり耳にしたことがあるはずです。これは何かと言うと、ドローンの民間資格の認定を「ドローン免許」と呼んでいるということなのです。
この記事では、Google検索などで「ドローン免許」という単語がたくさん検索されている現状などを踏まえ、あえて「ドローン免許」という言葉を使いますが、官公庁が発行するドローン免許はまだ日本には存在しない、ということをご認識いただければと思います。
一般的に「ドローン免許」と呼ばれているものは、どういった物なのか。基礎的な情報をおさらいしてみましょう。なお、繰り返しになりますが「ドローン免許」は正確な用法ではないので、以下の記事内ではすべて「 」で囲って表記するようにします。
ドローンに関しては、国土交通省が認定した民間の講習団体が発行する資格が存在します。これは「国土交通省(官公庁)が直接認定している」わけでないので、その点は注意が必要です。
DJIやDPA、JUIDAなどの団体管理を行い、その傘下の企業や個人が実際の講習を行うことで資格・修了証などが発行される、という仕組みです。これは運転免許証のように官公庁が認定する物とは正確には免許ではないのですが、一般的に「ドローン免許」と呼ばれる場合がある物です。
この資格取得後に「ドローン免許を持っているよ」と言うと誤解を招く場合もありますので、「○○の認定資格を持っています」という表現をするようにしましょう。
ここまでお読みいただいても「ドローン免許が民間資格だということはわかったけど、要るの要らないの?」と言うギモンが解消できないかもしれません。そこで、「ドローン免許(正しくは、民間資格の認定証)」はどのような場合に必要なのか、あるいは不要なのかを考えてみることにしましょう。
厳密に言うと「ドローン免許」を取得していなければドローンの利用が違法になる、という状況は今現在の日本には存在しません。そういった意味では「ドローン免許は必須ではない」と言えるでしょう。
ちなみに、おもに法律上の規制があるのはドローンの飛行場所や方法です。例えば、「人家が密集している場所でドローンを飛ばすには、事前に国土交通省に申請をして許可を得る必要がある」と航空法で定められています。また、目視外でドローンを飛ばす場合や祭事などの人混みの上を飛ばす場合も同様に承認を得る必要があり、これらに違反すると最大で50万円の罰金が課されると定められています。このように法律に基づくドローンの規制はあくまでも飛行場所や方法についてであり、「免許の有無」ではありません。
※FPV(1人称視点)ゴーグルを利用してドローンを飛ばす際に映像伝送に使う電波が電波法の規制対象になる場合があり、その際は「アマチュア無線免許」などが必要になりますが、「ドローン免許」ではないため本稿では割愛しています。
例えば「趣味でドローン空撮をしたい」という場合は、免許は必要ありません。もちろん「安全に運行するための知識と技能を体系的に身に着けてから飛ばしたい」という場合は免許の取得をするメリットはありますが、これは自身の努力の範囲であり法律に基づく「義務」はありません。また、実際にホビー用途でドローンを飛ばしている人で免許を持っていない人はたくさん存在しますから、法律や安全運用についての知識を自主学習できるのであれば、「ドローン免許を取得しなければいけない」ということはありません。
仕事をする場合でも免許の取得を義務付ける法律はありません。しかし、企業がオペレーターに依頼する場合は資格を取得優遇する場合が多くあります。
オペレーターの中にはラジコンヘリ時代から空撮をしていて業界で知名度が高く「累計飛行時間2,000時間」というような人もいて、このようなキャリア人は免許を持っていなくても仕事がとれますが、新しくドローン業界に参入して企業案件を獲得しようという場合は何かしらの免許がないと受注がとれないというのが実情です。
「ドローン免許」は積んできた操縦訓練の時間や、操縦技術の証明にもなります。また、安全管理能力の証明にもなりますので、「ドローンの仕事をするなら免許は必要」と言っても過言ではないでしょう。
「ドローン免許」には様々な種類がありますが、業界内で通用すると言えるのは国土交通省のウェブサイトの「無人航空機の講習及び管理団体一覧」に掲載されている管理団体が発行するものです。
このような団体については、国土交通省のホームページで以下の通り記載がされています。
実際にどんな団体が存在しているのか、というのは以下のリストでご確認ください。
また、講習団体として掲載されているドローン検定協会も、座学系の資格として知識を証明するものとしては認知度が高いと言えるでしょう。
ドローン業界においてメジャーな「免許」、資格の認定団体と認知されているのはこちらの実技+座学系が3団体、座学オンリー系が1団体です。
仕事でドローン操縦を行う際に取得しておくべき、最初の資格は以下の3つのいずれかです。ここから1つを取得すれば、プロフェッショナル・オペレーターとして仕事を始めるスタートラインに立ったと言えるでしょう。
ちなみに、これらの資格を取っただけであれば「ペーパードライバー」と同じであり、その先にどれだけ実務経験と実績を積んでいるかが、実際に仕事を発注する側が考慮する点になります。そのため、これらの資格は必要最低限の知識と技能を習得したと認められるレベルのもので、あくまでスタートラインであるという認識が必要です。
それでは、それぞれの主要3種の実技系資格の詳細をチェックしてみましょう。
世界最大の民生用ドローンメーカーDJI(日本法人)が管理するドローン技能認定資格です。ドローンの製造メーカーとして日本国内でも圧倒的シェアを持つ同社の講座だけに、豊富な飛行データや安全性に関する知見を踏まえたカリキュラムを学べる点が特徴です。また、以下の2資格くらべて安価に受講できるのも魅力です。ただし、受講者にはDJI製の機体を所持していることが条件となっており、他社製の機体を持ち込んでの受講はできない点は注意が必要です。
» DJI CAMP 公式ページ
» DJI CAMP スケジュール&申し込み
DPA(ディーパー)は飛行実技に力を入れているのが特徴で、実習を通じてドローンオペレーターとして即戦力になるために必要な知識と経験を学べるカリキュラムが強みです。3つの主要資格の中では、習得できる知識と技術の水準が最も高い免許(資格)であり同時に最も価格が高い講座でもあります。
» DPA公式ページ
JUIDAの講座は座学で学ぶ知識が体系的かつ網羅的に整理されている点が魅力です。それぞれの資格を取得することで、ドローンの操縦や安全運行管理、講習の実施(インストラクター業務)についての知識を有していることが証明できるようになります。実技に関しては一定のカリキュラムはあるものの、各スクールごとによりバラつきがあるため、高いフライト技術が求められる案件の場合は「操縦技能証明」だけでは不十分とみなされる可能性もあります。他の資格に関しても同じことがいえますが、卒業後にも自主的にフライトを行い、50時間以上の飛行経験を積むことが望ましいと言えるでしょう。
» JUIDA公式ページ
» JUIDA認定スクール一覧
ドローン検定は座学のみで、実技はありません。問題の難易度順に4級から1級までがあります、最も難しい資格が1級です。近年では提携スクールで実技訓練を行なっている場合がありますが、基本的にはドローンを安全に活用するための知識を学ぶための講座です。自分自身でドローン操縦士として飛行を行わずに「案件の発注などを行うために基礎的な知識が必要だ」というような場合などにおすすめの資格です。
なお、上級検定は難関と言われているので、合格できればドローンに関する広範かつ詳細な知識を習得していることが証明できます。
» ドローン検定公式ページ
»受験案内(受験申込)
上記の主要3資格のうちDJI CAMP・DPA・JUIDAのどれかで資格取得すれば、プロのドローン操縦士になるためのスタートラインに立てたと言えるでしょう。しかし、それだけではあくまでも始まりにすぎません。以下は主要3資格と比較した場合の難易度は上がるものの、取得しておくと仕事を受注する際にとても有利になる「免許(資格)」です。
ドローンを利用して田畑などへの農薬散布を行なうためには、農林水産省による技能認定を受け、農林水産省の外郭団体である農水協に空中散布用の機体を登録する必要があります。また、空中散布を行う前に「事業計画書」提出することで、ドローンを用いた農薬の散布が可能になります。必要なステップは少なくありませんが、他の免許と比べて特段に難易度が高いわけではありません。ある程度ドローンオペレーター経験を積んだら、より単価の高い案件を受注するためのステップアップとして取得する「免許」としておすすめです。
また、田畑への農薬散布が主になるため、ご自身が働くエリアの周辺に農家が多い場合や、自分自身が農業に携わり農薬散布などの知識がある場合は積極的に取得を狙うべき資格と言えるでしょう。
» 空中散布等における無人航空機利用技術指導指針
» 農水協公式ページ
日本屈指のドローン空撮のプロフェッショナルとして活躍する請川博一さんが主催する講座です。プロパイロットの実技試験は国内最難関として知られ、1,000時間を超える飛行経験をもつ操縦士すら落第するほどの難易度です。そのため、プロパイロットの資格をとることでドローン操縦士のなかでも抜群の操縦技能を有していることを証明できます。空撮関連のハイエンド案件を受注したい場合は取得にチャレンジしてみると良いかもしれません。
» Rave Project
※ 2回の昼食代、テキスト代込 ※「SkyLinkマルチコプター操縦士認定」所持者は、16,200円引き。
国産機体メーカーが認定する資格です。点検や測量、空撮などにドローンを用いる場合に、一部のクライアントは国産機体の使用を条件にするケースがあるので、そのような案件を狙ってリピート受注を取るドローン操縦士を目指す方におすすめの資格です。現状では旺盛な需要がある状況ではありませんが、将来的に国内機体を使用した案件のニーズが高まる可能性に賭けるという人はこの資格を狙ってみましょう!
» エンルート公式ページ
今回の「ドローン免許」についての記事をサクッとまとめてみると、要点は以下の通りです。
重要:公的期間が認定する正式なドローン免許は、現時点では日本には存在しない。
民間資格や認定のことを、厳密には誤用だが「ドローン免許」と呼ぶケースもある。
「ドローン免許」の例は以下の通り。
実際に「免許」を取得された方は、ぜひ、その体験談を私たちビバ!ドローンのFacebookページまお寄せいただけるとありがたいです! そして、ページへの「いいね!」も、ぜひ、よろしくお願いします!
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