10月24日のNHK報道番組「日曜討論」で、立憲民主党の枝野代表が「航空自衛隊は時代遅れになった戦闘機を購入しているのではないか」と述べて防衛予算の使い道に精査が必要だと主張しましたが、これは完全に間違っています。
最新鋭戦闘機であるF-35を「時代遅れになった戦闘機」呼ばわりするのは、全く理解ができません。
世界的に見てF-35の最新評価は、今年6月30日にスイスが次期戦闘機をF-35に決めた際のこれに全てが表されています。
戦闘機の購入は一大事業となるため、性能や値段だけでは決まらず政治的な理由で決まることも多いのですが、スイスははっきりと「F-35は最も性能が高く圧倒的に安い」と明言しました。候補4機種の中でステルス機はF-35のみで、性能はこの要素のみで決定的な差が生じているからです。
非ステルス機ではステルス機に勝てません。これは言うまでもなく自明なことであり、そして日本やスイスが現在購入できるステルス戦闘機はF-35だけなのです。
最近の航空自衛隊の新型戦闘機購入はF-35を合計147機です。退役する古い戦闘機との入れ替え更新なので、航空自衛隊の全体の戦闘機総数はほぼ変わりません。
立憲民主党の枝野代表は「時代遅れになった戦闘機を購入」と発言しましたが、自分たちが政権に就いていた10年前にF-35購入を決めたことをもう忘れてしまったのでしょうか?
航空自衛隊が調達する戦闘機は最前線で約30年使われる計画で購入される機材です。もしそれがたった10年で時代遅れになったというなら、責任は購入を決めた民主党政権にある筈ですが、枝野代表には民主党の流れを組む立憲民主党代表としての自覚があるようには思えません。
しかしそもそもの話として、F-35は今もなお最新鋭戦闘機の座のままでいます。F-35というステルス戦闘機を過去のものにするような新しい世代の戦闘機はまだ登場していません。
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あるいは枝野代表は「これからは無人機ドローンの時代だ、有人戦闘機はもう古い」と考えて「時代遅れになった戦闘機」と発言した可能性もあります。しかしこの場合でも完全に間違っています。
自律戦闘が可能な無人戦闘機は今直ぐ実用化できるようなものではなく、AI技術が更に進化しなければなりません。例えば2018年にアメリカ国防総省が発表した報告書「無人システム統合ロードマップ2017-2042」では、高度な自律戦闘が可能な無人機の登場は数十年後と考えられています。
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無人戦闘機を今直ぐ実用化は無理、5~10年先の近い将来でも無理、そして戦闘機の性能としての寿命が30年とするなら、今新たに作るべきは無人戦闘機ではなく有人戦闘機であるというのが世界の答えです。
現在、具体的に計画が始動している各国の新型戦闘機開発計画はどれも全てステルス有人戦闘機です。無人戦闘機はまだ時期尚早だと皆が認識している証拠です。
これら開発中の戦闘機は当然ですが今直ぐは買えませんから、F-35購入が間違っているとは言えません。新しい戦闘機の購入は退役する古い戦闘機との入れ替え更新なのですから、今買わなければ空の防衛に大穴が空いてしまうからです。