機体から外れたフラップのカバーは、滑走路(右側)を越えて空港保安用道路に落下した=成田国際空港会社提供
千葉県の成田空港で2月、着陸した日本貨物航空の大型貨物機から重さ約60キロのカバーが落下した問題で、機体の取り付け部分や固定する金具が破損していたことが同社の調査で判明した。運航する同型の全8機を点検したところ、別の2機で同じ箇所に軽微な傷が見つかった。当面は部品交換で対応し、点検の頻度を増やして安全を確認する。今後、重整備と呼ばれる大がかりな定期整備作業の際に抜本的に改修する。【中村宰和】 中国・上海から飛来した同社の貨物専用機ボーイング747―8F型が2月11日、成田空港に着陸した際、フラップと呼ばれる高揚力装置の可動部を覆うカバーが落下した。長さ4・4メートル、幅60センチ、重さ約60キロの一部金属のプラスチック製で、同12日、滑走路を越えた空港保安用道路で発見された。 同型機を巡っては、事前に製造元のボーイング社から破損した箇所の改修の指示が出ていた。日本貨物航空によると、「不具合が起こる可能性があるので強度を高めるように」との内容で、重整備の際の改修が求められていた。カバーが落下した機体の重整備は2023年4月で、その際に改修する予定だった。重整備は2年に1回実施し、約1カ月かけ、委託する海外の工場で点検し、徹底的な整備作業が行われる。 同社は同型機を計8機運航しており、カバーの落下を受けて2月12日に全機を目視で緊急一斉点検し、不具合は確認されなかった。2月中旬に改めて部品を外すなど詳しく点検した結果、落下のあった機体とは別の2機で同じ箇所に軽微な傷が見つかった。このため、落下のあった機体を含む計3機は、フラップの一部のカバーを外した状態で運航している。運航に支障はなく、発注した部品が届き次第、取り付ける。 同社は「地域住民をはじめ、関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけし、深くおわびする。同様の落下事案を起こさないよう再発防止に努める」とコメントした。 機体は2月11日午後9時2分、A滑走路(長さ4000メートル、幅60メートル)に着陸し、地上走行した。左主翼下部のフラップを覆うカバーが外れ、A滑走路の西端から約30メートル離れた着陸帯内の空港保安用道路で見つかった。本来、障害物があってはいけない場所で、カバーは落下した後、50メートルほど転がったか飛んだとみられる。フラップは機体が高度を下げて着陸態勢に入る際、格納場所から展開される。翼全体の面積が広がって揚力を維持し、速度を落として着陸できる。 ◇市長「桁外れに大きい」 過去、民家や車に直撃事案も 航空機からの落下物は別表のように、過去に民家や走行中の乗用車を直撃するなどの事案が起きている。成田市によると、成田空港周辺で落下した部品や氷塊が空港外の地上で発見される例は、平均で年間1、2件ある。国土交通省の調べでは、2020年度に航空機から部品がなくなっていたのは、成田や羽田など全国7空港で1005個の報告があった。留め具やシール、パネル、カバーなどが多く、重さは10グラム未満が8割近くを占め、1キロ以上は8個だった。 成田空港関連のこれまでの大きな落下物は、1996年8月のフラップのカバーで重さ30キロだった。離陸したアエロフロート・ロシア航空の貨物機から落下した部品で、栄町の民家近くの水田で見つかった。 今回の部品落下について、地元から厳しい声が上がっている。成田市の小泉一成市長は2月16日の定例記者会見で「あってはならない。二度と起こさないと強く約束してほしい。今までに聞いたことがなく、桁外れに大きい。空から物が落ちることは住民に相当の不安感を与える。空港の外に落ちていれば非常に被害が大きいと予想される」と語気を強めた。 成田国際空港会社の田村明比古社長は同24日の定例記者会見で「航空に対する信頼を揺るがし、重く受け止める。(発見までの時間は)遅いと思う」と語った。 空港会社は部品落下の連絡を受け、着陸から約1時間後の同11日午後10時13~24分と、運用開始前の同12日午前4時台にA滑走路を点検し、いずれも見つからなかった。半日以上過ぎた12日午前10時55分ごろの定期点検で発見した。空港会社は「滑走路の運用に支障はなかった」としたうえで、夜間や夜明け前の暗い時間帯の点検ではライトが届かなかったと説明し、今後、高感度カメラの導入などを検討する。========== ◇過去の主な航空機からの落下物2015年1月 芝山町の民家に航空機に付着していた氷塊が落下し、屋根瓦3枚が割れる2017年9月 全日本空輸機から重さ3キロのパネルが落下し、茨城県稲敷市の工場で発見 9月 KLMオランダ航空の機体から重さ4.3キロの胴体のパネルが落下し、大阪市内を走行中の乗用車を直撃2018年3月 成田市の民家まで約50メートルの山林で、航空無線用VHF(超短波)アンテナを発見。強化プラスチック製で高さ約50センチ、重さ約920グラム 5月 日本航空機のエンジンから飛散した金属片が熊本県益城町に落下し、建物や車両の窓ガラスを損傷