最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。私もプレイするまで正体が掴み切れず泣いています。そこで“なるべく早く”をモットーに、ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」。
今回はDemagog Studioが開発を、Untold Talesがパブリッシャーを担い、2021年09月03日、Windows PC向けにはSteam/Epic Gamesストアで、コンシューマ向けではPS5(国外)/PS4(国外)/Xbox One/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ(国外)向けに リリースした終末世界系ゴルフ『Golf Club Wasteland』、そのPC版について生の内容をお届けしたいと思います。
週末はゴルフで気分転換!なかなか外出も難しい今日この頃、いっそのことポストアプカリプス世界でアウトドアなんてのはいかがでしょうか?
……冗談はともかく、本作は非常によくできたゲームで、環境破壊の果てに滅んだかつての水の惑星地球を舞台に、主人公がただ静かにクラブを振ってゴルフコースを回っていきます。
ゴルフの再現度はあくまで記号的な程度ですが、そこへよく作りこまれた背景、戦略的なステージ構造、そして合間に挟まるちょっとした演出を重ねることで、全体で見れば独特で魅力的なプレイ体験を醸成しています。
またBGMや環境音にも力が入っており、火星から流れるラジオは、この世界の過去と未来を想像させ、我々により深い没入感を与えてくれました。
ゲームのボリュームについては、やりこみ要素を除けば、ストーリーモード全ステージを3時間程度で1周できたので、それこそ週末にサクッと遊ぶには丁度良いサイズ。さっそく紹介してまいりましょう。
本作の操作はマウス&キーボード、コントローラーに対応……個人的には前者の方が直感的で動かしやすかったですね。マウスクリックでクラブを構えて、ドラッグで距離と角度を整えたら玉を打つという操作自体は至ってシンプル。
グラフィックは調整できる項目は多いものの、画面サイズモードや解像度などは変更できず。ここらへん、人によっては不便を感じるかもしれません。
また言語は複数言語対応していますが、残念ながら日本語はありません。とはいえ、言葉がわからずともビジュアルだけでだいぶ伝わるものがあるので、個人的にはあまり気になりませんでした……って、あれ?スマホアプリの頃は日本語ありましたよね?消えた?
筆者は過去に本作iOS版を遊んだことがあり、今回のプレイレポでは当時と比較しつつ、本作がいかに進化したのかを確認しようと考えていました。ところが手元のiPhoneでいくら探しても肝心のアプリが見当たりません。
ははーん、さては親切なiOSちゃんが気を利かせて、使用頻度の低いアプリを自動削除してくれたんだな(当たり前ですが、設定変更していない筆者が全面的に悪い)……って、購入履歴を調べても見当たりません……なんで?
いやいや私たしかに買いましたよ。当時ひどい風邪をひいて、ベッドで寝つけずウンウン唸りながら本作でゴルフしてた記憶あります(寝てろ)。なんならSteamストアのスクショにも見覚えのあるステージありますもん。それが履歴にも見当たらない?え、違う世界線の話?ジョンタイター知らない?ラジオ館に人工衛星も知らない?
……なんてことはない、日本のストアからはアクセスできないだけでした。
Googleで検索するとトップに米国ストアのリンクは表示されるので、おそらく何か理由がある故の措置なのでしょう。とりあえず世界線は跨いでいないことがわかったので一安心。まぁもともと日本語対応していたことですし、PCとコンシューマにもそのうち導入されることを期待しましょう。
本作は基本的に、金持ちの中年が一人滅んだ地球でゴルフクラブを振る話です。……こう書くと新手のサイコパスミステリーといった感じですが、実際にプレイしてみて感じたのは、ポストアプカリプスではあるもののどこかノスタルジックな想いを抱かせる印象。
本作には日常から遠く離れた静かな場所で、ラジオを聞きながら無心にゴルフをすることに楽しみがありました。
それでありながら土台となるメインシナリオはしっかり作られており、全クリすると解禁されるデジタルコミック(?)も含めて、プレイ体験を向上させるという意味で程よい塩梅。
ステージは全部で35個あり、一応ゴルフゲームらしく、パーといったスコアの概念があります。
ただしランキングというよりは、条件達成による“ご褒美要素”としての側面が強く、それによってアンロックされる主人公の日記を読めば、このゲーム世界をより深く知ることができます。スコアによって可読範囲が変化するため、これは繰り返し遊びたくなる良い設計だと感じました。
また一部のステージは、ちょっとしたパズルやギミック要素があり、それらを利用することでハイスコアを狙えることがあります。なかにはピタゴラスイッチかな?と言いたくなるような面白いものも。
そのうちカメラを動かしてステージ内にパイプ管を探し始めるようになります。
序盤ステージクリア後には選択画面が表示され、ゲームの難易度を選ぶことができます。「STORY MODE」「CHALLENGE」「IRON MODE」の三つがあり、世界観に浸りたい場合はSTORY MODE、腕試しをしたい場合は他2つのどれかを選ぶと良いでしょう。
ただし「IRON MODE」は「CHALLENGE」をクリアしないとアンロックされないのでそこは注意が必要。
ちなみに35あるステージは後半戦になるにつれて、玉の精密なコントロールを求められたり、ステージ自体が異様に広かったりと、なかなかエグい箇所もあるので、慣れていない人にとっては、そもそもの難易度が高いかもしれません。
いくつかの障害物などにぶつかっては跳ね返りを繰り返し、2歩進んで3歩どころかふりだしに戻るぜ的な動きをされた時は、さしもの筆者も「んんん”ん”ん”ん”!!!」と声が出ました。
ゲーム起動時に推奨されるように、本作をプレイする際は是非ヘッドホンなどを使用することをおすすめします。いや本当にスピーカーとは全然違う……まるでヘルメットの中で周囲の音を聞いてるような錯覚すら覚えるくらい、音の配分に気を使っていると感じます。
なにより火星から流れてくるノイズ交じりのラジオが没入感をぐっと深めてくれる。旅先でドライブ中に流れてくるカーラジオのくぐもった音を聞いてる時のような、あの感覚に近いかもしれません。本作にはノスタルジックなものを感じると書きましたが、その一部は間違いなくこのラジオが占めていると思います。
選曲は好みがわかれると思いますが、個人的にドンピシャで当たりのものが多く大満足。先ほど触れたデジタルコミックの55ページ目に記載されたQRコードを使用すれば、サントラも入手可能なので是非ダウンロードしてみてください。
またラジオパーソナリティの語りが耳に心地よく、火星世界での暮らしがどんなものかをじわじわと染みわたらせていきます。その内容も変に説明文でもなく、かといって専門用語を並べて煙に巻くというのでもない、人々の生活を感じさせる実際のラジオ放送という感じですね。
最後までプレイしてなんとなーく、私が漫画「少女終末旅行」が好きな理由と同じものが、本作の根底に流れていると気が付きました。いろいろあるけど世界をありのまま受け入れてテクテクと進んでいく感じ、と表現すれば良いでしょうか。全身を包むような緩やかな流れが、非常に気持ちの良いプレイ体験でした。
“終末”はゴルフで気分転換がしたい!という方、是非本作を遊ばれてみてはいかがでしょうか。
タイトル:『Golf Club Wasteland』対応機種:PC(Windows)/PS5(国外),PS4(国外)/Xbox One/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ(国外)記事におけるプレイ機種:PC(Windows)発売日:2021年09月03日記事執筆時の著者プレイ時間:4時間価格: