ニコラス・トンプソン(以下:NT) まずご自身の活動について訊かせてください。
トリスタン・ハリス(以下:TH) Center for Humane Technologyのディレクターを務めています。人間の本質をしっかり踏まえたうえでテクノロジーを再編するのがわれわれの主な取り組みです。その前は、グーグルのデザイン倫理学者として、テクノロジーが人を引きつけることの倫理に関する研究をしていました。
ユヴァル・ノア・ハラリ(以下:YNH) わたしは歴史家として、人間はどこから来てどこへ向かうのかを探求しています。
Center for Humane Technologyの共同創設者兼エグゼクティヴディレクター。現職に就く以前は、グーグルでデザイン倫理学者を務めていた。Twitter: @tristanharris @humanetech
NT おふたりの共通点は、人間の思考は必ずしもわたしたちの思うようには働いていない、ということについて語っているという点です。どうやらこれまで信じてきたほどには、ぼくたちは自分自身の脳に関する主体性をもっていないようですね。
TH ユヴァルは「権限主体(オーソリティ)はどこにあるか?」という視点から民主主義について語っていますが、その話から多くを学びました。つまり、人々の意見や感情はどこにあるかという話です。
わたし自身は人の興味を引きつける技術の研究を10年続けてきました。子どものころから手品が得意だったのですが、手品は年齢や職業関係なく誰であろうと引っかけることが可能で、あらゆる人間に普遍的に働く原理が存在していることになります。
わたしはスタンフォード大でPersuasive Technology Labに在籍し、引きつけの原理をテクノロジーに適用する方法を工学系の学生に教えていました。テクノロジーによって人間の気持ち、態度、信念、行動をハックし、プロダクトに夢中にさせ続けることはできるのか、という内容です。
これはユヴァルとの共通の見解だと思いますが、人間の思考は、強い影響力に対して思っているほど完全防備ではないのです。そう考えると、われわれはまず外の影響力から守るべきものは何かを理解する必要が出てきます。
歴史学者。世界的ベストセラー『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福』『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』の著者。Twitter: @harari_yuval