25回目となるトキの放鳥が17日、新潟県佐渡市野浦地区の棚田で行われた。同地区での放鳥は初めて。5羽のトキが箱から元気良く飛び立つと、参加した地元住民ら約40人は、拍手をするなどして見送った。
放たれたのは、佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションで訓練した1歳の雄3羽と1、2歳の雌2羽。トキの生息域を佐渡全体に広げるため、箱に入れて移動し放鳥するハードリリース方式を採用した。
野浦地区は小佐渡東部の海岸に面し、山あいに棚田が広がる。野浦を含む前浜地域は、野生の日本産トキが1981年に捕獲されるまで生息地だった。農薬や化学肥料を減らした米作りを進めるなど、生き物を育む農業に取り組んでいる。
放鳥は、標高約350メートルの棚田のあぜに箱を設置。地元住民の代表らがテープを切り箱のふたが開くと、トキは黄金色に輝く棚田の上空を悠々と旋回し、林の方へ飛び立った。住民らはカメラやスマートフォンでトキの姿を追っていた。
放鳥の様子を見守った野浦の宮司臼杵秀昭さん(64)は「野浦でのトキの放鳥は念願だった。元気に育ち、トキの数が増えてほしい」と願った。
ハードリリース方式での放鳥は、式典を除きこれまで前浜地域の片野尾、新穂地域の生椿で実施。環境省によると、放した周辺でトキを見たという情報はあるが、定着には至っていないという。
環境省佐渡自然保護官事務所の澤栗浩明・首席自然保護官は「地域からの目撃情報を集めながらモニタリングを進め、推移を見守る。人とトキとの共生、地域の活性化につなげたい」と話した。
環境省によると、佐渡市の野生下のトキは17日現在、474羽。本州では1羽確認されている。