著:鳥山明『DRAGON BALL』完全版第24巻(集英社)
2022年の公開が予定されている劇場版『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』。その予告映像で、かつて孫悟空によって壊滅させられた「レッドリボン軍」のエンブレムが登場していました。果たして、その関係とは?【動画】レッドリボン軍のエンブレムが気になる映像 レッドリボン軍は『ドラゴンボール』の連載がまだ初期の頃に登場した悪の組織です。それまで悟空が戦っていた武闘家や小悪党と違い、「本格的な敵」として登場しました。 軍と名乗っていますが特定の国家に所属しているわけでなく、世界征服を目的とした組織で、人々からは「世界最悪の軍隊」と恐れられています。その悪名は田舎であるペンギン村にも届いているほど。 その総指揮者はレッド総帥。しかし、原作者の鳥山明先生によると、実質的に支配していたのはレッドリボン軍の兵器をすべて開発していたドクター・ゲロだったそうです。それゆえ、悟空によってレッドリボン軍が壊滅させられた後、ゲロは復讐のために人造人間の開発に没頭しました。 その傍若無人な行動は末端の兵士まで行っており、民間人への略奪や暴力、卑劣な行為など、数えてもキリがありません。ゲームにはなりますが、鳥山先生がいくつかの設定を新たに起こした『ドラゴンボールZ カカロット』では、人間を獣人にするアニマリンという薬の粗悪品をバラまいて資金稼ぎしていたことが分かります。これらの悪行やレッドの風体を見ると鳥山先生のイメージは、軍隊というよりはマフィアだったのでしょう。 連載当時はレッドリボン軍を言い表す一般的な言葉がありませんでしたが、現在の言葉に当てはめると「テロ組織」と言った方が近いかもしれません。昨今のニュースで取り上げられるテロ組織の暴挙と比べると、レッドリボン軍の行動は似たようなものだと感じます。 連載当時、レッドリボン軍が登場していた頃は、ベルリンの壁崩壊やソビエト連邦の解体前でした。第3次世界大戦がいつ起こるかもしれない不安がある頃ですから、一般的な目から見たら軍隊がもっとも恐ろしい組織だったのかもしれません。それゆえ、悟空の敵役組織として適当だったのでしょう。逆に言えば、レッドリボン軍のような悪のテロ組織がフィクションの世界だけでなく、本当に実社会で恐怖の対象になる日が来るとは思わなかった時代でした。 そんな悟空の「最初の敵」だったレッドリボン軍が、またしても立ちふさがることになるわけです。悪の組織は、ボスを倒しても集団として滅びないものなのでしょうか?