優れた続編は、あらゆる面で前作を踏まえている。どの作品も、エキサイティングなゲームプレイシステムや、魅力的なストーリーやキャラクターの成長、バラエティー豊富なミッションデザインなど、あらゆる面で前作を進化させてこその続編。『Horizon Forbidden West』はこれを見事にこなしていて、2017年に発売された『Horizon Zero Dawn』の素晴らしい土台を基に、機械獣との刺激的な戦闘やカッコいいアクションシーケンスが満載のスリリングなストーリーを描くだけでなく、マップに「ウィッチャー」風の集落を追加してサイドクエストをぎっしり詰め込んでくれた。探索も充実しており、この世界にはたくさんの魅惑的な伝承が隠されている。その結果として素晴らしいオープンワールドアクションアドベンチャーに仕上がっていて、昔の癖が出ることはあるものの、5年前に期待させてくれたことがしっかりと実現されていた。
今作の舞台「西の大地」では、自然物と人工物の衝突が至る所で見られた。サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジの残骸に絡まるツタから、さまよい歩く動物のような機械獣まで、遠い昔に滅びた人々の足跡をたどりながら「Horizon」シリーズの本質を多層的に物語っている。しかしこの衝突は、(前作のネタバレになるが)人間と人工生命が複雑に組み合わさった存在であるアーロイのなかでも起きているのだ。そこでゲリラゲームズは細心の注意を払い、悪くすれば退屈になりがちなテーマに独特な味を持たせてプロットの原動力にしている。
今回もアーロイは一刻を争うミッションにあたるが、登場キャラクターの多くが敵とも味方とも言えないため、あらゆることが謎に包まれている。紆余曲折に満ちていて、旅の最後までその先の展開が気になって仕方がない。その道のりは決して短くなく、私のプレイ時間はおよそ32時間となった(かなりのんびりと進めて、相当な数のサイドミッションもこなした)。
ゲリラゲームズは、世界観と一貫したストーリーのバランスをとるという点で、今回は間違いなく教訓を得ている。前作では大きく野心的なアイディアを取り入れていたが、廃墟となった研究所やオフィスで見つける音声やテキストファイルに過度に依存するなど、それを魅力的に伝えることにおいてはやや苦労していた。だが今回は舞台がしっかりと組みあがったため、前作でしばしばつまずいたその深い谷を乗り越えることができ、長ったらしい説明ファイルは使わずに上品に物語を伝えている。今回、ストーリーの重要な場面はすべてキャラクターを中心にしたドラマが展開する魅力的なカットシーンで描かれているが、長々と続くことはない。
とはいえやはりハードSF色が強く、序盤においてはその部分がやや弱点にもなっている。ときどき、前作での出来事や西の大地へ向かう旅の準備を振り返るモノローグがあまりにも長くなり、勢いが失われてしまうのだ。そのため出だしはムラがあるが、新たな脅威が登場してメインプロットが前面に浮かび上がってくると、一気にペースが上がりあっという間に夢中になる。ここからはぐんぐんと突き進んでいき、大興奮の最高に楽しいエンディングを迎えた。本作は「Zero Dawn」の続編となるため、前作をプレイしていない人は全体的なプロットにやや追いつけないかもしれないが、それでも楽しめる要素は存分にある。
ストーリーの長所には、そうしたぎこちない部分を打ち消すだけの力がある。とりとめのないホログラム欲を満たすよりも、人間ドラマや社会的・政治的対立に焦点を当てた方がはるかに強力だ。「Zero Dawn」が、アーロイが危険な新世界を発見するストーリーならば、「Forbidden West」は、アーロイがいかに危険な存在なのかを新世界が目の当たりにするストーリーだと言える。彼女は前作のあと、生ける伝説となった。ある者からは崇拝され、またある者からは恐れられる存在なのだ。
キャラクター描写も巧みで、出会ってすぐに彼らの行く末が気になってしまったのは、ライターの功績と言えるだろう。
その理由のひとつとしては、前作よりも世界全体やアーロイを取り巻く人々のことをはるかに気にかけているからだ。ここでの教訓は、”アーロイが自分に課したプレッシャーの一部はほかの人も一緒に背負ってくれる”ということだと早い段階から明らかになっていく。脇役もいい仕事をしてくれていて、特に冒頭から一緒に過ごすノラ族出身のアーロイの旧友ヴァールは、アーロイの魅力を最大限に引き出してくれる温かい仲間だ。孤独になりがちな「Zero Dawn」の冒険と比べると、これはうれしい変化だった。
前作はアクション満載の作品だったが、その演出は本作ほど映画のように感じられることはなかった。トニー・スコットの追跡シーンを彷彿とさせる動きのあるカメラワークを駆使し、巧みに演出されたカットシーンで重要な場面が描かれているのだ。単純に思えるかもしれないが、会話が中心のシーンでは広角レンズを使うなど、より繊細なテクニックで映画のような質感を持たせていて、キャラクターが体を使って表情豊かに動き、さまざまな感情がしっかりと伝わってくるようになった。『The Last of Us Part II』のようにトラウマだらけの作品ではないのに、ボリュームあるキャンペーンのなかで気持ちは高ぶり、間違いなく心を揺さぶられる。
高く生い茂った草陰に身を隠しながら近づき、静かに襲いかかる――多勢に無勢では面倒なことになる可能性が高いため、戦闘開始時にはステルス性の高いアプローチが賢明だ。殺傷能力の低い機械獣でも数が増えれば脅威となり、放っておけば執拗に攻撃を仕掛けてくる。”攻撃は最大の防御”という言葉がこれほど真実を突いているのは珍しいが、前作同様に機械獣の体には弱点が多数あるため、それを利用して彼らの戦い方に影響を与えて自分好みに変化させることができるのだ。
例えば、クローストライダーは非常に攻撃的な恐竜のような機械獣で、その尻尾を使った強烈な攻撃でプレイヤーを一掃してしまう。そんなのは勘弁だって? 敵を切り裂く矢で尻尾を切り落としてやればいい。あるいは、新しい粘着弾を使い黄色いネバネバで覆って動きを鈍らせるのも、こういったすばしっこい機械獣にはかなり有効だ。敵とその多様な攻撃を覚え、彼らの武器を特定して破壊することで選択肢を減らし、氷、炎、酸など相手の弱点となる属性で倒していくというサイクルは、何十時間やっても飽きることがない。「Zero Dawn」の戦闘はすでに素晴らしかったが、「Forbidden West」では新武器や弾の種類といった選択肢を追加し、これまで以上に柔軟性が感じられるようになっていた。
なかでも、爆発を起こせるスパイクスローワーは特に強力な新武器だ。発射物を機械獣に突き刺し爆発させることで大きなダメージを与えられる。大型の機械獣を相手にするときは、このアイテムがほぼ必須かもしれない。そして、本作での戦闘は、多くのゲームがそのグランドフィナーレに熱望するようなスケールとクオリティーを備えている。敵の武器を打ち落とし、それを奪って彼らに向けるという斬新さも加わり、狙った分だけ火力が上がるのだ。加えて、危険が高まる戦闘中にはダイナミックに音を盛り上げたり、「Zero Dawn」でおなじみとなったオーケストラの旋律に電子音を加えたりと、印象的なサウンドトラックが全編通して完璧に奏でられていた。
とはいえ、アーロイの武器はやはり弓矢が中心で、さまざまな種類が用意されている。武器ホイールに必要な属性すべてを揃えておくために、うまい組み合わせを見つけることが重要となる。そして次のステップとは、動きの速い敵に攻撃する技術を身につけることだ。確かに私は弓矢での戦闘に目がないのだが、機械獣の光る弱点に向かって次々と矢を放っていくのはたまらなくおもしろい。また、PS5のDualSenseコントローラー最大の特徴が活用されているため、弓の弦が指に食い込む感じが味わえ、コントローラーから反動が伝わってくる。
機械獣自体も極めて精巧に設計されており、それぞれがあらゆる秘策を持っている。彼らの動くスピードとパワーには目を奪われてしまうが、ものすごい勢いでこちらに向かってくるため立ち止まってじっくり観察している暇などない。しかし一瞬でもスローモーションになれば、窮地を回避する前に、歯車が口のなかでカチカチと動いているのを見ることができるはずだ。
前作ではストーリーの終盤で難易度が上がったが、それは本作でもあまり変わらない。特に難易度の高い機械獣には正面からぶつかるしかない場合もあり、自分が選んだプレイスタイルに十分自信を持つことが求められる。
スキルツリーは種類が豊富で独自のプレイスタイルを仕立てることができ、選択肢も前作から大幅に増えた。6種類のなかから、私は弓のスキルを最大にするため、また時間の流れを遅くする精神統一の効果を高めるために「狩人」に多くのポイントをつぎ込んだ。また、便利な弓のセカンダリファイアアビリティーもいくつかアンロックし、高いアーチを描く矢を放って敵へのダメージを増加させることができるようになった。新要素の「勇技」は各スキルツリーでアンロックできる特殊アビリティーで、戦闘中に断続的に発動し戦況を一変させることが可能だ。
戦闘は毎回異なり、より大きな敵が襲い掛かってくるため、最終的にはアーロイが持つあらゆるスキルを駆使しなければならない。考える力が鍛えられるし、何より一貫してその瞬間瞬間のゲームプレイが実に素晴らしい。この多様性の大きな要因のひとつは、敵の種類の多さだ。それは機械獣だけでなく、アーロイの行く手を阻む人間にも言える。
人間との戦闘は、建物や草木をかき分けながら身を隠したり飛び出したりと、かなりダイナミックだった。まるで、アーロイがエリーの日記から人間との戦い方が書かれたページを切り取ってきたような感じだ。近接攻撃の重要性も増していて、アーロイにとってより実用的で極めて楽しい選択肢になっている。槍を敵に突き立て、習得したコンボを決められるようになり奥が深くなった。
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のように”どこにでも登れる”とまではいかないものの、つかまることができる場所をスキャンするパルス機能のおかげで自由度は高く、たいていは行きたい場所への経路が存在している。間違いなく前作から進化しているのだが、山々に囲まれた世界に息苦しさを感じることもあった。戦闘中、アーロイが簡単に飛び越えられそうな1メートルほどの高さの壁を登るために、つかまる場所を探して走り回っているときにそれが顕著になる。しかも残念なことに、この行動は機械獣に踏みつけられ無残な死を迎えて終わってしまうことも多い。もっと自由なクライミングが普通となった現代において、あらかじめ定められたルートに縛られるというのは少々古臭いと感じてしまった。
同様に、プルキャスターを使ってグラップリング移動ができるようになったが、『Halo Infinite』のグラップルショットや「ジャストコーズ」のグラップリングフックのようなゲームチェンジャーだとは思わない方がいい。ここでは、世界を駆け巡るためのツールというよりも、厄介な状況から脱するために使う謎解き・戦闘ツールに近い。とはいえ、後半で解放的なアビリティーが登場し、マップの移動がもっとエキサイティングなものになると、クライミングに対する不満の多くはあっという間に忘れてしまうだろう。いくらでも時間をかけて探索したかった世界なので、これは大いに役立った。
美しい自然風景と脅威を感じる機械獣が惚れ惚れするほど見事に調和した『Horizon Forbidden West』は、これまでプレイした作品のなかで最高峰とは言わないまでも、ビジュアル面が非常に印象的な作品だと言える。ディテールをいくらか犠牲にして60fpsで滑らかなプレイを実現するパフォーマンスモードでプレイしても素晴らしいので、こちらを全面的におすすめしたい。ここは、深紅の草の葉ひとつひとつという細部から、地平線に広がる神々しい風景まで、驚くほど精細な世界だ。青々としたジャングル、どこまでも続く砂漠、雪に覆われた山頂、砂浜に打ち付ける液状の水晶のような白波……美しい景色は数え切れない。
本作では、その広大な世界にゆっくりと入り込んでいく。やや平凡で直線的なチュートリアルを終えれば、そこからは自由の身だ。より奥深いオープンワールドを構築するためにゲリラゲームズが多くの時間を費やしてきたことは序盤から感じられた。それは集落で顕著に示されていて、前作で比較的活気がなかった部分が全体的に大きく改善されている。
小屋が建ち並ぶ小さな村から大きな街まで、それぞれに味がある。私は古の建築物を家としている集落は特に気に入っており、例えば歌の平原に住むウタル族はパラボラアンテナを再利用して生活している。集落はそれぞれ独特で、たくさんの発見があるのだ。また、あちこちに古の文明が散りばめられていて、私たちが今生きている時代の歴史博物館のような、豊かで魅力的な風景を作り出していた。
部族はそれぞれ個性が際立っていて、コスチュームデザインも桁違いに素晴らしい。こうした集落は、物資を仕入れたり商人から新しい武器や防具を手に入れたりする場所であり、また、たくさんのサイドミッションが始まる場所でもある。これは、前作のオプションコンテンツがかなり限定的でワンパターンだったことを考えると、本作最大の改善点と言えるのではないだろうか。
サイドミッションは比べものにならないほどおもしろくボリュームも十分にあり、名も無き住人からの何でもないおつかいではなく、メインストーリーに巧みに織り込まれたものになっている。メインストーリーのなかで出会うキャラクターがもっと個人的な依頼をすることもあれば、新しく知り合うキャラクターが社会的な問題の解決を求めてくることもあるのだ。
こうしたサイドストーリーは体験を濃厚するものであって、その結末に影響を与えるような能動的な選択肢はそれほど多くないかもしれないが、私は自分の周りの世界を変えていくような感覚を味わうことができた。この点においては、『ウィッチャー3 ワイルドハント』のサイドミッションのアプローチを思い起こさせる。楽しいひと時が約束されているだけでなく、満足感のあるストーリーやユニークな装備に出会える可能性も非常に高い。
サイドミッションや旅の途中に出会う人々の多くは、メインストーリーのダークなテーマとは対照的に光を与えてくれる存在だ。世界の滅亡という話題とウィットに富んだジョークの間が違和感なくつながっているのは見事だった。サイドミッションで出会うキャラクターは誰もが独特で得られる報酬もそれぞれ特徴的であるため、同じようなことの繰り返しという感じはほとんどない。目的地アイコンが密集しているなかで、ワンパターンなクエストがかなり少ないというのは評価したいところだ。
サイドクエストのほかにも、多種多様な収集品探し、逆賊の野営地の一掃、闘技場での腕試し、キリンのような巨大な機械獣のトールネックに登って偵察など、たくさんのアクティビティーが用意されている。山肌に作られた高難易度のダンジョンである機械炉も再び登場するため、機械獣をオーバーライドして仲間として戦わせることも可能だ。特にお気に入りなのは、マップのあちこちに隠された謎解き要素のある遺物が眠る遺跡で、自分の頭脳を試すことができておもしろい。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』の影響はミニゲームの「ストライク」にも及んでいる。これはストラテジーボードゲームで、『グウェント ウィッチャーカードゲーム』や『アサシン クリード ヴァルハラ』のオーログと同様に中毒性が高い。ストライクは非常に奥が深く、対戦相手もたくさん存在していて、それぞれが独自のボードと駒、そしてプレイスタイルを持っている。本当に何時間でも没頭してしまうし、新たな機械獣の駒を探してコレクションに加えたくなるのだ。マップ上に多数ある目的地アイコンに縛られず、あてもなくぶらつけばランダムにイベントに遭遇し、リアルな発見の感覚が味わえる。また、あとになって集落で同じキャラクターにばったり再会するとアーロイの英雄的な行動に感謝してくれるため、こうした機会は自分の行動と世界の流れの結びつきをさらに強く感じさせてくれた。