煙が充満する工場内は赤い炎が燃え上がり、夜を徹した消火活動が11時間以上続いた。11日深夜に発生した新潟県村上市長政(ながまさ)の三幸製菓荒川工場の火災。5人が死亡し、安否が分からない人もいる。荒川工場では2019年11月にも製造機械を焼く火災が起きており、近隣住民からは「またか」と悲痛な声が上がった。
現場周辺には強烈な煙の臭いが漂い、時折「パーン」と破裂音が響いた。隣にあるリサイクル工場に勤める60代男性は「深夜に防災無線で火事を知り、来てみたら大変なことになっていた。煙が強まることもあるので心配だ」と話した。
懸命な消火活動が続いたが、放水した場所とは違う場所からも火の手が上がり、消火に手間取っている様子だった。建物の側面は焼け焦げたり、熱でゆがんだりしていた。県警は、建物の倒壊の危険があるとして、安否不明者の捜索を中断した。
近くに住む30代男性は「放水する水が少なくて消防が苦労しているようだった。工場ではよくぼやがあるので、またかと思った」とつぶやいた。
村上市消防本部は、新発田広域消防本部や新潟市消防局の応援を得て、計22台の消防・救急車両を出動させた。消火に時間がかかったことについて、担当者は「燃えやすい資材が多い上、内部が区画されており、大量の煙の中で進入口を見つけるのが困難だった」と説明した。
消火活動は長時間に及び、近くの防火水槽はほとんどが枯渇。離れた消火栓や用水を利用するため、複数台のポンプ車をつないだり、新潟市が派遣したスーパーポンパーと呼ばれる特殊な消防車を活用したりして、対応したという。
県内では2000年以降、工場や工事現場などで複数の人が犠牲になる爆発や火災が相次いでいる=表参照=。
03年5月4日には、糸魚川市(旧青海町)の明星セメント糸魚川工場田海鉱山のトンネル内にある休憩所の乾燥室付近から出火した。初期消火に当たった3人が死亡した。
07年3月20日には、上越市の信越化学工業直江津工場でメチルセルロース製造施設が爆発した。爆発は連鎖的に起き、作業員3人が重体となった。
上越市では08年7月15日にも、天然ガスパイプラインの敷設工事現場で爆発事故が起きた。掘削中の作業員2人が亡くなった。
南魚沼市の八箇峠トンネル建設工事現場では12年5月24日に爆発が起きた。換気設備を点検していた4人が犠牲になった。
いずれも工場責任者や施工業者の責任者らが、業務上過失致死傷の疑いなどで書類送検されている。