Oculus がPC不要の単体型 VRヘッドセット Oculus Goを発売しました。国内でも容量32GB版 2万3800円、64GB版 2万9800円で販売中です。
高性能スマホと合体するタイプのモバイルVRヘッドセットと同等の機能を備えつつ、着ければすぐ使えるシンプルさ、PC用のOculus Riftより高解像度な2560 x 1440 高速スイッチ液晶と最新の光学系でクリアな映像、軽く装着しやすい素材と設計、何よりも圧倒的に安価な点が特徴です。
Oculus Goは、FacebookのVR部門Oculusが2017年秋に発表したスタンドアロン型VRヘッドセット。Galaxyシリーズのスマートフォンを挿入するモバイルVRヘッドセット Gear VR をスマホ不要(※)の一体型にしつつ、最新の本体設計やディスプレイを採用して使いやすく、映像をきれいに、低価格で誰でも試しやすくした製品です。(※ 動作そのものにスマホは必要ありませんが、セットアップやアプリ管理にはOculusアプリが必要です。iOSまたはAndroid対応)
ソフトウェアは、もともとOculusがソフトウェアプラットフォームを担当してきた Gear VRと同様、モバイル版 Oculus Storeが動きます。要はGear VR互換なので、発売時点でアプリやゲームは1000種類以上。Oculus Riftなど他のもっと高価なVRヘッドセットと比べた制約は、ユーザーの頭(と体)の位置をVR空間に反映するポジショントラッキングに対応しないこと。(首の向きに相当する三軸自由度(3DoF)トラッキングのみ、上下左右前後への動きも反映できる6DoFトラッキングに非対応)上下左右を見渡す・見上げる・見下ろすことはできますが、しゃがんで下から見たり、頭や体を動かして避けるような動きには対応しません。(コントローラで「しゃがむ・避ける」や移動をするVRゲームなどはもちろん作れますが、実際の頭や腕の位置が反映されないという意味。)付属のリモコンもレーザーポインター的に使うタイプ。PC VRのハンドコントローラのように腕の位置までそのまま反映する機能はないため、腕を伸ばして掴んだり踊ったりは制限があります。Oculus Goは従来のいわゆるモバイルVRをシンプルに手軽にして、360度VR映像や、ポジショントラッキングが不要なVRゲーム・VRアプリを普及させることを狙った製品です。特に実写の360度VR映像では、仮にポジショントラッキングがある高度なPC VRヘッドセットでも、結局は収録時にカメラがあった場所に視点が固定されているため、見上げたり見まわしたりにのみ対応する3軸自由度のモバイルVRヘッドセットでも体験は変わりません。
一方で、Gear VR + Galaxyを安くした「だけ」というわけでもなく、最新世代の製品としてGear VRやPC用Oculus Riftよりも高性能な点、改良された点、使いやすく変更された点もあります。性能的にもっとも大きな違いは、2560 x 1440ピクセルの高速書き換え液晶ディスプレイと、最新世代のレンズを採用すること。(Oculus Rift や HTC Viveは2160 x 1200、PS VRは1920 x 1200の有機EL)Gear VR対応のGalaxyスマホや、多くのVRヘッドセットは書き換え速度などから有機ELを採用しますが、Oculus GoはVR用に最適化したという高速書き換えタイプの液晶ディスプレイを採用します。液晶を採用したのはコスト低減も理由ですが、「次世代Oculusヘッドセットと共通」というレンズの採用とあわせて、・有機ELよりもピクセル間の隙間(ギャップ)が少なく、網戸のような格子の見づらさ(スクリーンドア効果)を軽減・従来タイプの有機EL用のサブピクセル補正が不要で処理が軽い・レンズによるグレア低減(強い光が漏れたように滲むやつ)・視野周辺のボケ軽減といった映像の改良につながっています。描画は60Hzまたは72Hz。プロセッサはSnapdragon 821。もっと高価なモバイルVRヘッドセットや最新スマホが採用するプロセッサには及びませんが、初代Google PixelやZenFone AR、LG G6などと同じです。また液晶の特性による、有機EL採用デバイスと比較した描画オーバーヘッド軽減や、周辺視野の解像度を落とす新描画テクニック Fixed Foveated Rendering (FFR)から、従来よりも描画の負荷を低減しています。Oculusによれば、視界をタイルに分割して目の感度の低い周辺ほど解像度を落とすFFRにより、最大25%ほどの性能向上(つまり負荷軽減)が見込まれるとのこと。本体設計の改良は、スマホを着脱する必要がないことから、Gear VR+Galaxy比でやや軽量化、通気性のよい布素材、顔にあたる部分のクッション形状の改良など。Gear VR同様に眼鏡を着けたままでも使える設計ですが、オプションとして眼鏡併用がしやすくなるスペーサーも用意します。さらに、裸眼でかけられるよう Oculus Go用の度付きレンズも後日オプションで提供予定。音も Gear VR や Oculus Riftと違う点。Oculus Goは本体だけで3Dオーディオに対応しており、ヘッドホンを使わずそのまま使えます。(Gear VRではスマホ依存だったため、収納されたスマホ側のモノラルで聴いたり、イヤホンを着ける必要があった)。本体スピーカーの音は周囲の人にも聴こえますが、これは目の前の着用者がいま何を見てるのか、コンテンツのどのあたりなのか全く分からないVRの弱点を軽減する意味もあります。音漏れすると困る場合は、ヘッドホン端子に好みのヘッドホンを装着可能です。主なハードウェア使用は、5.5インチ2560 x 1440 高速スイッチ液晶、Snapdragon 821プロセッサ(初代 Google PixelやZenFone AR、LG G6などと同じ)、32GBまたは64GB内蔵ストレージなど。バッテリーは、動画再生で約2時間30分、ゲームやアプリでは概ね2時間程度。
Oculus GoはあくまでモバイルVRを手軽にする製品のため、高度なVRゲームやPCアプリを使ってみたい!という場合、高価なPCとOculus Rift や HTC Viveのかわりにはなりません。しかし動画を見るような用途の場合、一般的なPC用VRヘッドセットと比較しても画質面では同等または上回っています。また同じモバイルVRといっても、VRを考慮していないスマホやiPhoneを装着する安価な「スマホVR」ゴーグルとは、肝心の画質もアプリも雲泥の差。最新世代のGear VRより改善している点もあるため、VR動画視聴や、PCが不要なVRコンテンツを持ち歩いて見せるような役割には最適な製品です。レンズや本体設計の改良を無視して中古で同等環境を揃えようとする場合、ソフトウェアが互換なGear VRはもともと1万円程度の周辺機器のため、また小刻みにモデルチェンジして型落ちが出回っていることから中古ならば安く手に入るものの、肝心のGalaxy S7以降が2万円では購入できないため、またリモコンも別途必要になるため、新品のOculus Goより高価になります。(スマホ合体型の場合は「外せばスマホとして使える」という当たり前の利点がありますが、メインのスマホをVR兼用にすると、着信チェックやちょっとした非VRアプリのためにいちいち外したり、構造的にヘッドセット側レンズとスマホのあいだにゴミが入りやすく超絶気になる、バッテリーの減りが不安といったこともあり、VR専用があるといろいろと楽ではあります。)
モバイルVR製品では、GoogleのVRプラットフォーム Daydreamを採用したレノボのMirage Soloのように、スタンドアロン型かつポジショントラッキングにも対応した製品がそろそろ出始めつつあります。
Lenovo Mirage Soloが日本上陸。体育会系VRデバイスの真打ちとなるか?
ミラージュソロは5万1200円。またDaydreamは後発のためアプリがOculus Storeより現状かなり少なく、ポジトラ対応はさらに少数です。Oculusでもポジショントラッキングに対応したスタンドアロン型ヘッドセットのプロトタイプ Project Santa Cruzを公開していましたが、今のところ製品版の発表はありません。