和泊港に漂着した軽石(右)で作ったブロック=霧島市の鹿児島県工業技術センター
鹿児島県内に漂着した、小笠原諸島の海底火山噴火で発生したとみられる軽石を有効利用するため、鹿児島県工業技術センター(霧島市)は効果的な塩抜き方法を確立した。比較的少ない水量で塩分を0.01%以下に低減できる。軽石を材料に使う軽量コンクリート骨材の日本産業規格(JIS)にも適合し、活用の広がりが期待される。【写真】漂着軽石(右上)を条件を変え焼成すると、(左上から反時計回りに)黒天目や銀色、赤みがかった金色に変化した
軽石は無数の小さな穴があり、一度海水が染み込むと塩分が抜けにくい。工技センターは、沖永良部島の和泊港で回収された漂着軽石(塩分1%)で条件を検討。軽石の10倍の重量の水道水に12時間浸す作業を2回繰り返す方法を考案した。 予備実験では、1回で0.01%以下にするには、100倍の重量の水に24時間浸さなければならなかった。今回の方法だと水量は5分の1で済む。軽石の水への浸し方は、じかに浮かべても、土のう袋に詰めたままでもいい。特に、土のう袋に入れて底に沈めた場合の塩分除去効果が高かった。 工技センターによると、県内離島を中心に回収された漂着軽石は約7700立方メートル(8日現在)に上り、ほとんど廃棄されている。袖山研一・シラス研究開発室長は「漂着軽石には鹿児島のシラスや火山灰にない優れた特徴があり、工業的な利用価値が高い。新たな分野への展開も見込める」と話した。 ■ブロック、ゼオライト、釉薬…広がる可能性
鹿児島県工業技術センターは、漂着軽石を緑化基盤ブロックや、脱臭材などに使われるゼオライト(吸着剤)に加工できることを確認した。厄介ものの資源化へ弾みが付きそうだ。 工技センターは、シラスに含まれる軽石で保水性や透水性に優れた緑化基盤ブロックを開発し、2006年に地元企業と共同特許を取得している。漂着軽石でも同様にブロックを作れることを確認した。シラス軽石製にはない水に浮く性質があるため、鹿児島大学水産学部と協力し、浮き魚礁への利用に向けた基礎研究を進めている。 神奈川県産業技術総合研究所と特許出願中の技術を活用し、漂着軽石のゼオライト化にも成功。今後、吸着性能を検証し、地元企業への技術移転を目指す。このほか、漂着軽石の組成が桜島の火山灰に近いことが判明。焼成条件によって赤金や銀のような色味が出ることが分かり、焼き物の釉薬(ゆうやく)への利用を想定している。