それは昨年11月のある昼下がり。Eric Joeさんは自作のヘキサコプター(写真)をカリフォルニア州モデストの実家の庭で飛ばしていました。低空・低速で飛ぶこと3分半、いきなりズドーン!と隣のくるみの木の影から発砲音が1発轟いたかと思うと、ドローンははらはらと地面に墜ちてしまいました。
「『撃ったんですか?』ときいたら、『ああ。どうだ、当たってるか?』と言ってました」(Joeさん)
McBayさんは「CIAの監視装置だと思ったのさ」と言います。ここで散弾銃もってる人と口論しても始まらないなと思い、Joeさんは日が暮れるのを待ってメールで弁償をお願いしてみることにしました。
すると、McBayさんからはこんな答えが返ってきました。
Joeさんも応酬。
3分後、McBayさんからは「事実誤認。これ以上、話し合うことはない」と返事がきて交渉はあえなく決裂に。結局Joeさんは少額訴訟を起こし、裁判所はJoeさん側の言い分を全面的に認め、先月800ドルの賠償請求を認める判決を下しました。判決理由は「自分の敷地で飛んでるかどうかも顧みず、息子にドローンを撃ち落とさせたのは不当」というもの。
以上が、Ars Technicaが報じたことのあらましです。これについて米Gizmodoはいろいろ解釈が難しいよね、という話を補足していますよ。
まあ、今回はたまたまカメラが搭載されてなかっただけで、そんなの遠くから見てもよくわかりませんからね。誰だって家の中を覗かれたり撮影されたりするのは嫌なものですが、仮に家の中や庭をドローンで覗かれた場合、合法的にどこまでがINでどこからがOUTか、不法侵入の対処は州によってまちまちなのが現状です。そもそもドローンを飛ばすことが不法侵入に当たるかどうかも、裁判所の解釈は統一されてないんですね。
カリフォルニア州では2月、私有地上空を飛ぶドローンも不法侵入の定義に含めることが法律に盛り込まれました。が、他の州ではまだまだで、米連邦航空局(FAA)ですらドローン飛行規制の方策についてはまだ話し合ってる段階です。
遅々として捗らないのは、地主が所有権を主張できる空域がどこからどこまでなのか、この線引きが曖昧なことにも原因の一端があります。昔から地主の所有範囲は地面と垂直に線を1本引けば、地下から地上までそれで定義は終わりでした。そこに飛行機が登場して定義は一部見直しを余儀なくされ、さらにドローンの登場によって、法律とFAAも私有範囲と航空可能領域のラインを決めなきゃならない必要性に迫られているんです。このラインについては、「アマゾンのドローン宅配を住居不法侵入で阻止できるのか?」という命題にからめて、ウィスコンシンの弁護士が優れた考察(英語)をまとめています。
アメリカの多くの法域で今話し合われているラインは上空500フィート(152m)というものです。が、あんまり深く考えて決めたラインじゃないので、これで解決できない問題もありそう。実際、性能のいいカメラだと、600フィート(183m)先からでも他人の家の中は丸見えでプライバシー侵害は可能ですからね。FAAが定める模型飛行機(ドローン含む)の安全上のガイドラインでは、ドローンの飛行範囲は高度400フィート(122m)以下に制限しなくてはならないことになってます。つまり、不法侵入を避けたかったら、本当は私有地上空は地主の許可なしにドローンは飛ばしちゃいけないんですね。これだと覗き見される心配はないので、そういう意味ではいいルール。
今回のJoeさんの場合、隣の敷地には飛ばしてはいないわけですが、間の公道を一瞬飛んでたようなので、そのときMcBayさんの目には侵入されたように見えたのかも。
支払いはまだということなので、くるみの木を挟んでまたひと悶着ありそうですね。
Top image: Eric Joe via Ars Technica
source: Ars Technica
Kiona Smith-Strickland - Gizmodo US[原文]
(satomi)