好奇心を満たすための機材。それって最高のおもちゃじゃない?
世界で初めて液晶パネルを採用し、その後のデジカメに影響を与えたカシオの「QV-10」が生まれたのは、1995年。解像度は25万画素相当で、1/5インチのCCDイメージセンサーを使っていました。その25年後。デジカメは1億画素を実現するまでにいたります。
ことほどさように、イメージングの世界はハンパないスピードで進化しています。映像においても、フルHD→4K→8K、さらに一部のジャンルでは12Kまで登場しています。こんなモンスタースペック、使いこなせる人っているんですか? えぇ、いるんです。
映像クリエイターの高嶋綾也(たかしま りょうや)さんは、常に高解像、高精度なアウトプットを追い求めてきました。自身が運営するYouTubeチャンネル「Peaceful Cuisine」とサブチャンネル「Ryoya Takashima」の登録者数をあわせると280万人超え! その作品の多くは4K画質で、一部の映像は12Kをダウンコンバートした8K映像で公開されています。
今回、クリエイター向けPCブランドraytrekのデスクトップPC「raytrek ZG 写真&動画編集向けモデル」を、高嶋さんに使ってもらいました。CPUにCore i9 11900K、GPUはRTX 3080、メモリはカスタムしてたっぷり128GB(通常32GB)も積んでるこのモンスターマシンは、同じくモンスター画質を追い求める高嶋さんにとってどんな存在となったのか。実際の編集体験も交えてお話してもらいました。
── 高嶋さんがアップしている「120万円のカメラ買ってみた」という動画がありますよね。動画では富士フイルムの1億画素カメラ「GFX 100」を紹介していましたが、2020年1月当時に1億画素を手に入れるって、ヤバイよなぁと思いました。
高嶋綾也さん(以降 高嶋さん):もともと中判デジタルカメラに興味があって、ハッセルブラッドの「H6D」や、中判デジタルバックの「Phase One(フェーズワン)」が気になってたんです。僕は星やランドスケープの写真をよく撮るんですけど、「普段撮影している風景を中判で撮ったらどうなるんだろう」と思い始めて。なので表参道にあるハッセルブラッドのお店や、Phase Oneの会社に直接行って触らせてもらいました。
── あぁ、それは不運…。
高嶋さん:その印象があって、しばらく中判からは離れてたんです。でも、だんだんと機能がよくなってきて、富士フイルムから1億画素の「GFX100」が出て。「これならまた買ってみるか」と思ったんです。
── もともとは何を撮るために買ったんですか?
高嶋さん:1億画素あれば12Kのタイムラプスが撮れるんですよ。それをやってる人は僕の知る限りでは誰もいないので、これはやってみるしかないなって。誰もやってないことをやってみたいという気持ちが強いんですよ、何事も。あとはもう興味本位ですね。「いったいどんな写真が撮れるんだ」という。シンプルにそこが気になる。
── YouTubeをみると写真やカメラといった機材についても詳しいと思ったのですが、そのあたりの経歴はどうなんでしょうか?
高嶋さん:もともとカメラがすごく好きで。15年くらい前からデジタル一眼レフが普及し始めたと思うんですけど、その頃にニコンの「D40」を買いました。600万画素くらいだったかな?
── 2006年頃のデジタル一眼レフカメラですね。
高嶋さん:その頃からずっと写真は趣味で撮っていて、しばらくして動画が撮れるデジカメも増えてきたんです。それでニコンの「D7000」を買いました。それからデジカメで動画を撮るようになって。趣味で撮っていたので、フォトグラファーとして生計を立てていたわけでも、動画で生計を立てていたわけでもなかったんです。
── そうなんですね。てっきり職業ビデオグラファーなどやられていたのだと思っていました。
4、5年くらい前からYouTuberという言葉が出始めてきましたね。今ではYouTuberと呼ばれることもありますけど、自分でもフォトグラファーなのか、ビデオグラファーなのか、YouTuberなのかわからないですね。
── 趣味の延長が、最終的にYouTuberに繋がってきてる感じはありますね。
高嶋さん:全部趣味ですね、クライアントワークはほとんどしませんし。でも新製品を触れるのは面白いので、メーカーさんに声をかけていただくことはあります。DJIのドローンとかも使わせてもらっています。
── 僕たちギズモードも新製品大好き集団なので、なんだかシンパシーを感じてしまう次第です。編集部員にも高嶋さんのファンがいました。
高嶋さん:ありがとうございます、更新頻度が遅くて申し訳ないです…(笑)。
── サブチャンネルではカメラやバックパックなど、機材のレビュー動画も見かけるのですが、機材やガジェットそのものは以前からお好きだったのでしょうか?
高嶋さん:機材はかなり好きですね。カメラに限らず調理道具やアウトドアの道具もそうですし、ギアと呼ばれるものは全部好きです。
── 最近、気になっている機材はありますか?
高嶋さん:うーん、なんせまだ「GFX100」を全然使いこなせてないんですよね。2年弱くらい触ってるんですけど、中判デジタルカメラは奥が深いです。かつ、使いづらい。
── ボタン少ないですもんね。でも、それでもあえて使い続けるのは、1億画素でしか撮れない絵があるとわかっているからですか?
高嶋さん:そうなりますね。とはいえ、一番すごい写真を撮れるのはフィルムだと思いますよ。フィルムは画素数無限なので。
── フィルムカメラは今なにかお持ちですか?
高嶋さん:ハッセルブラッドの500Cを使っています。フィルムでは人を撮影することが多いかな。「GFX100」で使ってるマクロレンズも、元々はフィルムカメラのために買ったんですよ。現像したフィルムをデジカメで撮影してデジタル化しようと思って。「GFX100」のピクセルシフトマルチショットってあるじゃないですか。
── イメージセンサーをシフトさせて16枚の画像を撮影・合成して、4億画素の画像を撮影する機能ですね。
高嶋さん:そのピクセルシフトの4億画素でフィルムを撮影したらどうなるのかなと思って、そのためにこのレンズを買ったんです。フィルムで撮った写真を4億画素で保存するなんて、誰もやってないと思うので。
── ここでも、「誰もやってないからやってみよう」の精神ですね。
高嶋さん:そうです。他のメーカーもフィルムスキャナーを出してるんですけど、いいやつだと300万円くらいするんですよ。レンズならもっと手頃な価格で高画素なスキャンができるので、ある意味お得かなって。
── たしかにお得です。どちらも遠い世界の話な気もしますが。
高嶋さん:機会があれば4億画素スキャンの様子も動画化したいなと思ってます。あと、今やってみたいのは、クジラの撮影です、1億画素で。
── クジラですか? どうしてまた?
高嶋さん:今年、初めて水中でクジラを撮影したんですけど、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。ここにかけてあるクジラの写真はソニーの「α7S III」で撮影しました。水中撮影できるようにハウジングも新しく買いました。
── これを今度は「GFX100」で撮影してみたい、と。
高嶋さん:そう。でも、撮れるかどうかはわかりません。クジラって意外と早くて、水中だと泡にAFが引っ張られることがあるんですよ。α7S IIIは1秒に10コマの連写ができますが、「GFX100」は5コマくらいなので、貴重な瞬間を切り取れるかもわからない。AFの精度もどうなるか謎です。
── ドッシリと構えて撮るカメラですもんね。
高嶋さん:しかも「GFX100」の水中撮影用のハウジング、100万円以上するんです。
── ハウジング代で、もう1個「GFX100」が買えちゃいますよ…やべぇ…。
高嶋さん:なんならカメラより高いです(笑)。1億画素で水中からクジラを撮影なんて、まだ誰もやってないと思います。確かハッセルブラッドでやってる水中写真家がいたと思うんですけど、あれは5000万画素くらいだったと思います。でも、5000万画素でもすごくきれいな写真でした。
── 水中のダイナミックレンジは僕らが見る大気中のそれとは違うはずですし、階調の豊かさが活きてきそうですね。
高嶋さん:水中の撮影って、地上で撮るよりも画角が狭くなるんですよ、空気と水で光の屈折率が違うから。なので、この撮影のために12-24mmの広角ズームを新しく買いました。でもいざ泳いでみたら思ったよりクジラに近づけなくて、これなら手持ちの16-35mmで良かったなと(笑)。
── 色んな想定外が起こるのも、新しいことに挑戦したからこそですよね。
高嶋さん:やってみないとわからないですね、何事も。
── ちなみに「GFX100」と「α7S III」は、どういう時に使い分けてるのでしょう?
高嶋さん:基本は写真と動画ですね。「GFX100」は写真、「α7S III」は動画です。でも、被写体によっては「α7S III」で写真を撮ることもあります。やっぱり「GFX100」だと使いにくいシーンなどもあるので。
── スナップ感覚でカメラを持ち出す時は?
高嶋さん:「GFX100」です。もう気合いで持って行ってます(笑)。
── サブチャンネルではVlogやレビュー動画などを出されていますが、撮影環境やセッティングはどうされていますか?
高嶋さん:自宅にたっぷり自然光が入るので、ほぼ素の状態です。三脚とマイクを立てて、光源は自然光のみ。すごくシンプルなセッティングだと思います。料理動画も自然光です。
── いま高嶋さんのご自宅でインタビューと撮影をしていますが、もう家がめっちゃ良いですね。自然光入りまくりで、どこを撮ってもすごくキレイに映るなぁと。
高嶋さん:明るすぎるので一部の窓は塞いでますね。だから照明機材は持ってないですし、知識もゼロなんです。照明のメーカーさんからも声をかけてもらうこともあるんですけど、レビューができないんですよね、わからなくて(笑)。
── なんといいますか、知識の偏りがすごいですね。かたや1億画素、かたや照明ゼロ。
高嶋さん:一応小さいのは持ってるんですけど、ほぼ使わないです。外での撮影でも照明は不要ですし。
── Vlogの動画を拝見すると、セルフィーで撮ってるものもあったと思うのですが、あれはどうやってるんでしょう?
高嶋さん:「α7S III」を無理やりセルフィー的に持ってます。レンズを掴んで自分に向けて。
── 筋力がモノを言う自力セルフィーだったのですね! てっきりジンバルなどを使ってるのかと。
高嶋さん:ジンバルなどのアタッチメントを付けると機動性が落ちちゃうので。「撮りたい」と思った時にすぐ撮るためには、手持ちが一番だと思ってます。バックパックにしまっていたり、何か準備が必要だったりすると、すぐに撮れない。最近はカメラ側の手ブレも優秀ですから、手持ちでも十分ですね。
── タイムラプス撮影の時は、どんなセッティングなのでしょうか?
高嶋さん:星のタイムラプスの場合は、まずGoogle Mapでロケハンをして、場所を探します。それから日中のうちに現地に行って、撮影の角度探しや、周辺に道路がないか、人工光が映り込まないかを確認します。夜に行くと真っ暗でわからないんですよ。で、夕方に改めて現地に行って、スライダーの準備や撮影時間・枚数などのセッティングをします。バッテリーが途切れないようにするのも大事ですね。
── 撮影時間や枚数は、何を基準に決めるのでしょうか?
高嶋さん:被写体によりけりですね。日中の景色であれば15分くらいの撮影でワンシーン撮れます。300枚ほど撮れば10秒の動画が作れるので、撮影時間としては15〜20分くらいかなと。星の場合は1枚撮影するのに15秒くらいの長時間露光が必要で、インターバルを含めると20秒か30秒くらいかかる。夜の場合は10秒ほどの動画を作るためには、3時間くらいかかると思います。
── 早ければ15分、長ければ3時間。かなり差があるのですね。
高嶋さん:カメラも複数台持っていって、同じロケーションで違う画角で撮影することもあります。
── 12Kで撮影したタイムラプス動画(YouTube上では8K)の場合も、同じような方法ですか?
高嶋さん:そうですね。実はあの動画を撮影した夜は満月で、かなり明るかったんです。月が出てる時はシャッタースピード1秒くらいで良くて、ワンシーン30分くらいで済んだかと思います。日の出のように見えるシーンがあるんですけど、あれは月の出なんですよ。なので現場は真っ暗です。
── 1億画素の「GFX100」だと1枚の撮影データの容量はどれくらいになるんですか?
高嶋さん:ロスレス圧縮で80〜120MBくらいですね。非圧縮だともっと大きくなります。
── すごいデータ量ですね。
高嶋さん:タイムラプス撮影をしていると256GBのSDカードがあっという間に終わります。なので、256GBのSDカードを何枚も持っていきます。
── 256GBとか、写真を楽しむ分にはほとんど使い切れないサイズですよ! それを何枚も用意するほどですか…。
高嶋さん:普段から8枚くらい持っていきますね。1回の撮影で300枚か480枚、まれに1000枚ほど撮ることもあります。時期が良い時の天の川は、夜が更けたら見え始めて明け方までずっと見え続けるんですけど、そうなると前日の20時から撮影スタートして、明け方5時まで撮影しっぱなしです。こうなると1000枚を超えますね。
── こうした大量の撮影データは、編集時にはどう取り扱うんでしょう?
高嶋さん:一度外付けのSSDに格納します。でも、普段使ってるPCだとすごく遅いんですよ、特に12K撮影の場合は。プレビューが追いついてこないし、プロキシ(動画編集に適した軽いサイズの作業ファイル)の解像度を最低値まで下げても全然ダメ。なので、一度書き出さないとチェックできないんですよ。書き出してチェック、また編集。それを繰り返しています。
── 普段はどんなPCを使っているんですか?
高嶋さん:ラップトップとデスクトップ、両方持ってますが、普段の編集ではデスクトップを使ってます。ラップトップは外出の時に使ってますね。主に使うソフトはAdobe Photoshop Lightroom ClassicとLRTimelapse。動画編集はAdobe Premiere Proがメインで、たまにAdobeAfter Effectsを使います。
── 料理の動画とタイムラプスの動画、どちらの編集が大変ですか。
高嶋さん:断然、タイムラプスの方が大変ですね。シンプルにデータが重いですし、「GFX100」で撮ったタイムラプスはさらに重い。全部の写真を現像しないといけないのがとにかく大変で、LRTimelapseはそこの調整を指示した通りにやってくれるのが便利なんですよ。そうしてレタッチした写真を300枚ほど書き出して、今度は動画ファイルに変換しなきゃいけない。特にここの工程が重いです。元素材のままだとProRes 12bitの高解像度画像なので、動画編集時は再生できっこないですね…。
── もう想像で編集、カットしていくしかないですよね。
高嶋さん:そうです。なんとなくで編集して低解像度で書き出して、ここがイマイチだなと調整していく。あと、そもそもソフト自体が上手く動かないときがあって、そんなときは色んな動画ソフトを試してみます。
── Adobe Premiere Pro以外にですか?
高嶋さん:Adobe Premiere Proが動かなかったらFinal Cut Proを、そっちも動かなかったらDaVinci Resolveを試す、という感じですね。12KのタイムラプスはDaVinci Resolveで編集してます。動画ソフトにはあまりこだわりはないですね。
── かなりマシンスペックを要求する作業をしていると思うのですが、PCにはどんなスペックを求めますか?
高嶋さん:GPUかなぁ。あと、ソフトウェア側ももっとGPUを活用してくれるようになると良いのにと思ってます。
── 動画編集時のカラーグレーディングなどはどうしていますか? 高嶋さんの動画はいずれも色に統一感があってサムネがとても映えているように見えます。
高嶋さん:特にこだわりはなく、比較的シンプルなやり方だと思いますよ。「α7S III」で撮るときはS-logで撮って、一番スタンダードな709のLUTを当てて、あとはシャドウが持ち上がってる絵が好きなのでRGBカーブでシャドウを持ち上げて少しコントラストをつけて、終わりです。
── 細かく追い込んだりはしないのですね。もっとガッツリ作り込んでるのかと思ってました。
高嶋さん:僕と同じ色は簡単に作れると思います(笑)。昔はノイズがひどい機種もあったので、ノイズリダクションでなんとか綺麗にできないかと頑張ってましたが、最近のカメラは本当にキレイなのでとても助かってます。あと、α7S IIIが10bitカラーになったのも大きいですね。
── 8bitと10bitの両方を知っているからこその意見ですね。
高嶋さん:でも、現状でもプロキシの表示は8bitなんですよ。だから色を見る時はプロキシを外さないといけない。圧縮の必要があるから仕方ないとは思うんですけど、これもAdobeやソフト側へのお願いになりますかね。
── 色はシンプルというお話でしたが、逆にこだわっている部分はどこでしょうか?
高嶋さん:音が反響しすぎないことや雑音を減らすこと、そのあたりは考えてます。Vlogの時はカメラの上にマイクを付けてますし、料理の時はマイクを立ててますね。
── 現状、撮影や編集などの動画制作フロー全体において、悩みなどはありますか?
高嶋さん:先ほども話した、プレビューのカクつきですね。カクつきに関しては「α7S III」でもいくらかあるので。特にコーデックがH.265だと圧縮率が高いので、再生のたびにデコードする必要があって、やっぱり遅くなります。悩みがあるとすれば編集の工程ですね。
── 今回「raytrek ZG 写真&動画編集向けモデル」を使ってもらいましたが、かなりスペックの高いデスクトップPCです。実際に映像編集で使ってみて、いかがでしたか?
高嶋さん:実は先日出したコーヒーマシンの動画は、お借りした「raytrek ZG」で編集したんですよ。
これ、リップサービスでもなんでもなく、ほんとに動作が早すぎてびっくりしました。衝撃的なまでに速い。そもそも編集時にプロキシ使わずに作業できたんですよ。コーデックH.265で。
── 書き出しの作業はいかがでしたか? こちらもやっぱり早かった?
高嶋さん:動画そのものの再生時間より書き出し時間の方が早かったです(笑)。先ほどのコーヒーの動画は7分くらいあるんですけど、書き出し時間は4分くらいでした。今までは30分以上かかってたので、そのあいだ離席するのが常でしたが、ネットサーフィンしてたらもう書き出しが終わってるレベルです。なんなら動画を書き出しながら裏で動画を見られるくらい。
── 高嶋さんはラップトップもデスクトップもお持ちですが、raytrek ZGのようなデスクトップを使うメリットはどこにあると思いますか?
高嶋さん:写真の編集をすることが多いので、ディスプレイは大きいに越したことはないかなと思います。ラップトップだと大きくても15とか17インチですけど、デスクトップなら24インチとか32インチも選び放題ですから。僕の場合だと、特に写真の編集においてはディスプレイが大きい方が使いやすいです。細かい部分もよく見られるので。
── 最近はどんなジャンルのクリエイティブにおいても、PCが欠かせないツールになっていると思います。raytrek ZGのような性能の高いPCは、新しい表現にチャレンジする際に重要だと思いますか?
高嶋さん:とても大事だと思います。僕の場合だとタイムラプスですが、書き出しに何時間もかかることもあるんですよ。それが数十分で終わるとなれば、作業量が全く変わってくるので。実は12Kのタイムラプスも、撮影自体は今年の年始にやったんです。でも編集するとPCの動作があまりにも遅いから、手がつけられなかったんですよ。書き出しも途中でとまっちゃうほどで。公開するまでに半年かかっちゃいました。それが高性能なPCなら時間の短縮にもなるし、パワフルな作業ができるようにもなるし。マシンのスペックは本当に重要だと思います。
── ハイスペックなraytrek ZGだからこそ試してみたい表現はありますか?
高嶋さん:タイムラプスは撮った映像を繋げるだけなので、動きを入れる余地はあるかもしれませんね。そうした動きを入れてる人はわずかに見かけますが、しっかりやってる人は見たことがありません。そうした編集も余裕でできると思いますね。もっとダイナミックにみせたり、何かエフェクトを足したりとか。
── 高画素といえば、プラットフォームにも限界があると思います。YouTubeは12Kにはまだ非対応ですし、そもそも8Kを映せるディスプレイがほとんどありません。それでもあえて高い画質で撮影するのはどうしてでしょう?
高嶋さん:元のデータが高画素だと、たとえダウンコンバートしたとしてもクオリティに違いがあるんですよ。それこそフィルム写真ってドットで構成されてないから画素数無限ですよね。だからこそ解像感もすごいし、たとえ1080pxのデジタル写真にしたとしても解像感は維持されてる。それをやる意味がデジタルにもあると思うので、インプットは最大値、現状なら12Kで撮る。それを4Kや8Kに落としてアウトプットしたとしても、12Kで切り取った立体感や解像感は残っていくと思うんです。
── カメラでいうと、「撮れれば何でも良い」と考える人も一定数います。高嶋さんはいろいろなカメラを試しては手放してきたと思うのですが、色々なカメラを試すのはどうしてでしょう?
高嶋さん:興味、それに尽きます。例えば最初に話したハッセルブラッドのフィルムの4億画素スキャンも、それをやったらどうなるかが、気になるんですよ。しかも誰もやってないなら、これはもう自分がやるしかない。とりあえず、やってみる。そこでイマイチだったら他を探してみる。
── 高嶋さんが求めるすべての要素を備えた究極のカメラがあるとしたら、どんな要素を望みますか?
高嶋さん:大きさや重さはあまり気にならないですね。そこは自分の肉体を鍛えれば良いと思います。実際に20Kgくらいの荷持と「GFX100」を携えて、3泊4日の登山に行ってますからね。重さよりも画質優先です。
── 自宅に見えている懸垂器具が、その哲学を物語ってますね。
高嶋さん:筋肉、大事です(笑)。例えばさっき話したクジラの写真は「α7S III」で撮ったので、画素数としては1200万画素なんです。その画素数だとプリントサイズに引き伸ばすに全く足りなかったので、画素数を増やすソフトを色々買ってみて試したんです。最終的に一番納得できるものを選びましたが、もしこれが1億画素で撮れたらどうなるか。空気感や立体感が変わるはずなんですよ。そこ、すごく気になるんですよ。
── 実際は予算や体力などの問題で夢想するだけに終わってしまうけれど、あえてそこをやっちゃうのがスゴイなと思います。ちなみに、やってないことを思いつくアイディアや着想元はあるのでしょうか?
高嶋さん:「○○と○○を組みわせたらどうなるんだろう?」という着想から来ることが多いですね。思いついたら調べてみて、それで誰もやっていないんだなと知る。例えばフィルムの4億画素スキャンも調べるといなかったので、これはやってみたいなって。
── 新しい表現へのチャレンジをするきっかけとなっているカメラですが、高嶋さんにとって機材はどんな存在なんですか?
高嶋さん:おもちゃですね。興味を満たしてくれる存在です。自分の部屋に飾ってる写真も自分が満足するためなので、おもちゃだと思います、機材って。
誰もやったことがない表現に挑み続ける、高嶋綾也さん。しかし、誰もやったことがないということは、データも作業量も甚大になるということ。「raytrek ZG 写真&動画編集向けモデル」の高いスペックは、未知の表現を可能としてくれるマシンであることがわかりました。だって、今まで動かなかったプレビューが動くようになるってすごい!
今回は連載として、デジタルアーティストの小林健太さん、3DCGアーティスト集団のCyberHuman Productions、そして映像クリエイターの高嶋綾也さんの3人に「raytrek ZG 写真&動画編集向けモデル」を使ってもらいました。
いずれも使用ソフトや作業内容は異なるものの、最前線で活躍するクリエイターの相棒となるに充分なスペックだったと言えましょう。高性能なPCはそれを使う者の創造力を支え、まだ見ぬ表現を生み出すツールになってくれるはずです。
raytrek ブランドサイト
raytrek ZG 写真&動画編集向けモデル
Photo: Daisuke Ishizaka
Source: raytrek