イワノ・フランキフスク州刺繍の上手な女性の家を訪れた稲田美織さん 写真提供/稲田美織
日本時間2月24日の13時ごろ、ウクライナの首都・キエフで爆撃が起きたと報じられた。そのとき、写真家の稲田美織さんのもとに、ウクライナに住む知人から「爆弾の音がした」と連絡が来たという。【写真】2022年キエフで開催中の稲田美織さんの写真の2人展、ウクライナの町や人 ウクライナ情勢が緊迫している。ロシアは2月21日、「ルガンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」の独立を承認。プーチン大統領は、両国に「平和維持軍」を送ることを宣言した。ウクライナ外相はロシアがウクライナ全面侵攻に乗り出したと伝え、各国が経済制裁に動き出している。そして冒頭のように、実際市民の暮らす首都キエフで爆発音が確認されたのだ。この爆発音のあとにロシア・国防省が「高精度な兵器があるところだけ破壊しており、一般市民は脅かされていない」と発表したと報じられた。 果たして、ウクライナに暮らす市民たちは無事なのだろうか。そしてウクライナに暮らす人は、これまでロシアをどのように思っていたのだろうか。ウクライナ独立から30周年の今年、ウクライナ・キエフにて写真展を開催中の写真家・稲田美織さんが、これまで見てきたウクライナと、会って来た方々の言葉とともに現実を伝える。
現在、私はウクライナで国交樹立30周年の記念展覧会に作品を展示しています。2021年12月から2月まで開催を予定されていたもので、ウクライナがソ連から独立して30年という意味もあります。コロナ渦でキエフでの展覧会開会式には行けず、3月まで延期されることになったため、会期中に行けることを願っていました。しかしこのところのウクライナの厳しい状況で、それも叶いません。そこで今、自分にできることをしようと思いました。現状は連日の報道で詳しく伝えられていますが、私が過去に3回ウクライナを訪れ現地にて見て肌で感じたこと、得たこと、そこで近しくなったウクライナの方から聞いたウクライナの方々の想いをお伝えできればと思います。 私は9・11のテロをNYで目撃して以来、人々を平和に導く宗教すらも紛争の原因になる現実に衝撃を受け、それ以来、世界中の聖地をカメラに収めてきました。私の写真展にいらした、当時の駐ウクライナ馬渕睦夫大使より撮影の依頼をいただき、2006年、初めてウクライナを訪れました。その時、ウクライナの国中を巡って撮影し、私はウクライナの歴史、宗教、文化、自然と共存する人々の生活や彼らの人間性に触れることとなりました。 2008年には、駐日ウクライナ大使館の主催により、3月23日から6月1日まで、それらの写真で「ウクライナの魂―聖なる豊かな大地」という展覧会を開きました。東京農大と国立ウクライナ農業大学が姉妹校ということで「豊かな大地」というテーマになったのです。その後は、キエフの姉妹都市である京都でも展覧会を開き、駐日ポーランド大使館のギャラリーでも「山でつながる国」という展覧会を開きました。