「SNOW MIKU 2022」の会場でメインビジュアルにカメラを向けるファン
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下クリプトン社、本社・北海道札幌市)が企画開発した音声合成ソフトウェア「初音ミク」から派生した北海道を応援するキャラクター「雪ミク」のフェスティバル「SNOW MIKU 2022」が、北海道小樽市などで2月5日から12日まで行われた。 雪ミクは2010年の「さっぽろ雪まつり」で、真っ白い初音ミクの雪像が登場したことがきっかけで誕生。以来、雪まつりに合わせて冬の北海道を応援する「SNOW MIKU」が毎年開催され、多くの観覧者を楽しませてきた。しかし、新型コロナウィルス感染症(COVID―19)の影響で、メイン会場を初めて小樽市のウイングベイ小樽に移した2021年は、振り替え日程での開催を余儀なくされた。また、雪まつりがオンライン開催となったことに伴い、雪ミクの雪像も初めて配信でのお披露目となった。 記者は2014年から毎年「SNOW MIKU」を取材してきたが、雪ミクの雪像には、昼夜を問わずカメラを向けるファンがあふれ、雪像前に設けられたオリジナルグッズショップや札幌市内のメイン会場では極寒の中、いつも大勢のファンが行列を作るなど、雪ミクの人気は群を抜いていた。それだけに、いかにコロナ禍のせいとはいえ、昨年のような閑散とした小樽会場を見ることになるとは夢にも思っていなかった。 今年も新型コロナウイルスの感染拡大を受け、さっぽろ雪まつりは中止になったが、「SNOW MIKU 2022」は、入場時のソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保、検温の実施、手指の消毒とマスク着用の徹底、厚生労働省の新型コロナウィルス接触追跡アプリ「COCOA(ココア)」のインストールと北海道コロナ通知システムの登録義務づけ、展示物や各企業ブースは距離を空けるなど最大限の防止策をとり、当初の予定通り開催。2年ぶりの”通常開催“とあって、初日からたくさんのファンが会場に足を運び、「これこそが本来の雪ミク!」という声も聞こえた。主催のクリプトン社をはじめ、関係各社、来場者がしっかりと感染症対策をとって臨んだおかげで、イベント終了から約1か月が経過したが、参加者から感染者を出さずに乗り切った。 クリプトン社で「SNOW MIKU」統括を務める目黒久美子氏は「無事に終えられて一安心です。昨年はコロナ禍での初めての開催となり、試行錯誤しながらの実施となりましたが、今年はその経験を生かして、各所協力しあい、スムーズに準備・運営を行うことができました」と、ホッとした表情。昨年から2年連続でメイン会場となったウイングベイ小樽が、2020年まで札幌市で主に使用していた会場よりも10倍以上広かったことも功を奏した。「会場施設が大きいため、昨年に引き続き、広くスペースを取ったエリア作りを行いました」と目黒氏。 コロナ禍で世の中全体が「新しい生活様式」へのシフトを求められる中、等身大の初音ミクと様々な景色を楽しめるXR(エクステンデッド・リアリティ=現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術の総称)企画やワークショップなどの会場内での催しに加え、積極的にオンラインを活用。会場からの生レポート番組「出張版! 雪ミクのじかん」では、展示や出展ブースの紹介、2023年の雪ミクの新情報発表など、会場の外に向けて様々な発信を行った。目黒氏は「これまでは現地でお楽しみいただくことを目的とした企画が多かったのですが、オンラインのおかげで、ほかの地域の方々も一緒に楽しめる企画を増やすことができたので、その点はよかったと思います」と前を向く。2007年に”誕生“した初音ミクは、インターネットを通じて全世界に広まり、活動の世界を広げてきた。初音ミクの派生キャラクターである雪ミクが、オンラインとの相性抜群なのも、ある意味当然のことだろう。 今後の「SNOW MIKU」ついて目黒氏は「雪ミクの衣装はもう10年以上、一般公募で決定しています。そうして皆さんと一緒に創った作品で、北海道を盛り上げる活動ができるのは、雪ミクの魅力だと思います。北海道といえば食も大きな魅力なので、コロナの状況が落ち着いたら、食にフォーカスした展開も実施できればと考えています」と語る。記者もウィズコロナ時代の新しいイベントスタイルの可能性を示しながら、より進化していく「SNOW MIKU」のこれからを見守ってゆきたい。 【雪ミク雪像、オンライン配信でライトアップショー】 さっぽろ雪まつりの代替イベント「オンラインさっぽろ雪まつり2022」に、今年も雪ミクの雪像が登場した。大通公園で雪像を制作中に雪まつりが中止になり、急きょ札幌市郊外に”移設“。配信用に例年行われているライトアップショーも再現してみせた。さっぽろ雪まつり実行委員会の山上一心氏は「通常のライトアップは有観客で行うため、ライトの当て方や配置に制限がありますが、無観客だった今回はライトアップの技術をより発揮しやすかったので、配信用としてはすごくいいものができたと思います」と胸を張った。雪まつりにおける雪ミクの存在については「誕生から10年を超える北海道を応援するキャラクターですし、我々にとってもコンテンツの一つとして非常に大事なものであると思っています」と話した。
報知新聞社