新潟県佐渡市で野生復帰が進むトキについて、環境省は早ければ2026年度にも本州など佐渡以外で放鳥する方針を決めた。島内のトキが約430羽まで増えて過密になっている恐れがあることや、島外でも繁殖が進めば佐渡で伝染病がまん延しても多くのトキが死ぬリスクを分散することを理由に挙げている。
環境省は「トキ保護増殖事業計画」の改定案などを中央環境審議会の小委員会に諮問し、了承された。
改定案によると、25年度までに本州などでトキの受け入れに意欲的な地域を中心に、新たに放鳥する候補地の調査や検討を進める方針だ。
環境省によると、佐渡ではピーク時に80%を超えていた放鳥トキの1年後の生存率が、近年では40~60%程度に低下している。原因として、生息環境が過密になっている点が指摘されている。
また、中国から贈られた7羽のいずれかの血を引いているため遺伝的多様性が低く、佐渡島内で伝染病が発生した際にトキの生息数が急減するリスクが高いという。
環境省希少種保全推進室は新潟日報社の取材に「佐渡での野生復帰が順調に進んでいるからこそ、次の段階として佐渡以外でのトキの定着を目指す」との認識を示した。
佐渡での放鳥は08年9月に始まり、これまでに415羽が放たれた。