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(※写真はイメージです/PIXTA)
スマートフォンやPCの普及などにより、現代人の多くが目を酷使する生活を送っています。目がかすんだり、ぼやけて見えたりする経験は誰しも身に覚えがあり、見えにくさを感じても「よくあること」として放置してしまいがちです。しかし、そうした「何気ない症状」が怖い病気のサインであることも…。目の健康を守るために知っておきたい、正しい知識を紹介します。
[図表1]放置すると危ない「目の症状」をセルフチェック出典:梶原一人著『放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)より
「モノがぼやけて見える」「視力が下がってきた」「目がかすむ」なんとなく気になる目の症状があっても、そのまま放置していませんか? 目の疾患には、これといった自覚症状がないままじわりじわりと進行して、気づいたときには失明寸前になるものがいくつもあります。「目が疲れているんだろう」「年のせいだろう」そんなふうに“自己診断”して放ったらかしにしがちな症状のウラに、目を急激に衰えさせる病気がひそんでいることも少なくありません。「頭痛がする」「ムカムカして吐き気がする」こんな目とは関係ないように思える症状が、実は目が見えなくなってしまう病気の兆候だったりするのです。東京・錦糸町にある「眼科かじわらアイ・ケア・クリニック」には、毎日のようにたくさんの患者さんが、視野が欠けたり黒いゴミのようなものが見えたりして見えづらくなってから、あわててやってくることが多いです。「もっと早く病気を特定できていれば、適切な治療ができたのに」「目の病気について正しい知識があれば、ここまで視力を落とさずにすんだのに」そんな思いをすることが決して少なくありません。また近年、自分の病状に不安を持ちながら、納得いく治療が受けられずに「眼科難民」となっている人が増えています。手遅れになってしまい、後悔する患者さんを1人でも減らしたいという気持ちでいっぱいです。
私の父は医師であり基礎医学の研究者でもあり、人に感謝された話などを子どもの頃からよく聞かされていました。その影響で私は、「人に喜んでもらえる仕事っていいな」という憧れから医師になることを決意し、慶應義塾大学の医学部に入りました。卒業後に眼科医として働き始め、多くの目の病気と向き合っていたのですが、そこで「不治の目の病」を患う人が多いことに愕然としました。私は、目の病気で苦しむすべての人を助けられるわけではないという無力さを痛感したのです。「治らない」といわれる病気の原因を突き止めて治療法を見つければ、より多くの患者さんを救うことができるはず。そう思った私は、米ハーバード大学にリサーチ・フェロー(研究員)として留学しました。ハーバードでは、遺伝子異常(突然変異)が原因で視野が次第に狭くなり、だんだんと明るい場所でなければ見えづらくなって、失明する可能性もある目の難病「網膜色素変症(もうまくしきそへんせいしょう)」を研究していました。そしてハーバード1年目で、世界的に権威がある英科学誌『ネイチャー』に論文が掲載されました。自分でいうのもなんですが、『ネイチャー』に論文が掲載されるのは、研究者としてかなり栄誉なことです。「網膜色素変性症の解明につながるかもしれない」と意気込んだ私は研究を続け、また新しい発見について論文を書くと、これも世界的に権威がある米科学誌『サイエンス』に掲載されたのです。世界中の研究者が論文掲載を夢見る科学誌の両雄『ネイチャー』『サイエンス』に論文が掲載されたことは、私の大きな励みになりました。しかし、研究を続けていくうちに、わかってきたことがありました。「網膜色素変性症」の原因となる遺伝子は1つや2つではないということです。「すべての遺伝子を見つけ出すには、気が遠くなるような年月がかかる」と考えた私は、別のアプローチから難病の治療に挑もうと、4年間を過ごしたハーバード大学を去りました。今度は米スタンフォード大学で研究を続けることにしたのです。スタンフォードでは、7年間研究に打ち込みました。こうして世界最高峰の大学2校で、計11年間研究を続けた結果、私はある考えに至ります。当時40歳を目前にしていた私は、医師として残された人生には限りがあることを再認識。「目の悩みを抱えて困っている人たち」を救うには、目の前の人を助けるという医学の原点に立ち戻って、いま持っている医学的な知識と経験を総動員して、医師として患者さんに関わるべきだと考えたのです。米国の医療界では、「TLC」(Tender Lovely Care)という言葉がよく使われます。これは「患者さんの立場になって優しく心のこもったケアをする」という意味です。私はこの言葉を実践する自分のクリニックをつくろうと、日本への帰国を決意したのです。
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