機材はいいのですが、日本におけるドローンを取り巻く環境はやっぱりネックかなと。
ドローンに折りたたみ式プロペラアームというトレンドをもたらしたMavicシリーズの最新鋭機「DJI Mavic 3」がやってきました。2016年に登場した初代Mavic Pro、2018年にテイクオフしたMavic 2 Proと比べてまず「Pro」という名前が取れたことが気になります。もしかして廉価版となった?
いえ、違います。近年のDJIは製品ブランドネームのリニューアルを進めており、DJI Mavic 3もその一環として三世代目のMavicということを表す名前になった模様。その証拠として、ハードウェアとしての作り込みがスゴイ。オールインワンの撮影用ドローンとしては世界最高峰の出来なんじゃないでしょうかコレ。
今回は実機をお借りして、試してきました。
肝心のカメラ性能からチェックすると、ハッセルブラッドの名がつくフルサイズ換算24mm f/2.8~11の広角カメラは有効画素数2000万画素のマイクロフォーサーズセンサーを採用。最高で5.1K 50fpsで録画できます。4K撮影時は120fpsのスローモーション動画も撮れるようになり、映像表現の自由度が大幅にアップしました。
レンズ交換はできないけど、DC-GH5M2(パナソニックの一眼カメラ)を超える性能を空に飛ばして自由なアングルで撮影できるカメラシステムといえばわかりやすいでしょうか。
同ユニットには、1/2インチ CMOSセンサーでフルサイズ換算162mm f/4.4という望遠カメラもビルトイン。ドローン=広角撮影という常識を吹っ飛ばすモデルになっています。
このカメラユニットが実に小さい。1インチセンサーを搭載するRX0IIよりも小さい感じ。もちろんあちらはディスプレイやシャッターボタンといった部品も組み合わさってこそのハードウェアですが、センサーとレンズ、そのカバーという部品のみ使えば、マイクロフォーサーズセンサーを用いても握った手の中に入りそうなくらい小さなユニットとすることができる事実にびっくりします。
本体重量はバッテリー込みで895g。わずかではありますがMavic 2 Proの907gより軽くなりました。ただし手に持ったときの密度感は、重量バランスが改善されたのかバッテリー形状が関係しているのか、DJI Mavic 3のほうが上。折りたたみ収納時のジンバルカバー&プロペラ固定ベルトにしても合理的な作りで、よく練られた優れた道具という雰囲気で満ちています。
コントローラはDJI Air 2sなどと同じもの。iPhoneのMaxシリーズを取り付けられるホルダーつきで、スマホアプリ画面もコントローラの一部として使います。ちょっと重いけど操作はしやすい。
ではテイクオフ。プロペラの風切り音は控えめに、ふわっと飛び上がります。最高飛行速度は21m/s(約76km/h)、運用限界高度6000m(ただし日本で150m以上の高度で飛ばすには、事前に国土交通大臣の許可が必要)、最大飛行距離30km(目視外飛行となること確実なので、事前に国土交通大臣の許可が必要)、無風時の最大飛行時間46分と、ドローンとして立派な性能を持ちます。何度かカッコ書きを入れているように、コイツの実力を引き出すには許可取りが欠かせないんですけどね。
肝心の撮影画質はこちら。1倍、2倍、4倍はマイクロフォーサーズセンサーで、7倍、14倍、28倍は1/2インチセンサーを用いて撮影しています。4倍のときよりも7倍のほうがノイズが少なく高画質だったりしますが、このズーム力は圧倒的じゃないですか。山梨県鳴沢村から撮ったとはいえ、ここまでズームインできるなら登山中のクライマーの姿も確認できちゃうかもしれません。
マイクロフォーサーズセンサー側の画質も想像以上のクオリティです。1インチセンサー搭載のMavic 2 ProやDJI Air 2Sも納得のクオリティでしたが、細部のニュアンスまで残す録画画質はいろんな映像を作りたいという欲求にかられるものです。またドローンを使ったフォトグラメトリ(被写体をさまざまなアングルから撮影して3DCGモデルをつくる手法)においても、DJI Mavic 3は効果を発揮するでしょうね。
障害物検知センサーの精度も高まり、200m先にある木や壁も検出できるようになりました。もちろん自動回避も可能だから、操縦者は被写体を画角内に捉えることだけに専念できます。さらに被写体のトラッキング性能も高まりました。ドローン本体の前後左右から検出できるため、被写体の動きが激しすぎて画角外に飛び出しそうなときでもしっかりと捉え続けてくれる印象です。
いやあ、よくできています。標準モデル25万3000円、専用バッグにバッテリー3本や充電ハブ、NDフィルターが入ったDJI Mavic 3 Fly More コンボ34万1000円も、この性能ならアリなのではと思えます。
ただしそれでも、現在の日本の状況を考えるとおいそれとおすすめできない気持ちもあります。国土交通省への許可申請がオンラインで行なえるようになった現在ですが、地主さんや土地を管理している自治体や地域団体への許可取りは別途必要です。そしてこっちが難しい。ドローンに対する理解が進んでいない地域だと個人で許可を取るのは至難の業です。
1kg近いものを飛ばして、それが万が一墜落したらどうなるかと考えれば、及び腰となってしまうのは仕方ないでしょう。でもいまのままではドローン=プロフェッショナル用のカメラとしての認識が強まっていくはず。うーん、どうしたらホビーとしてのドローンの認知度を高めていくことができるのでしょうか。たぶんなんですけど、メーカーや代理店がタッグを組んでの、地方自治体に対する啓蒙活動が必要なんじゃないかと思うんですよね。難しいかな。でもほんと、今のままでは。
Source: DJI撮影協力: アブラサスホテル富士河口湖