「4K・VR徳島映画祭」は、徳島県名西郡神山町を開催地として、2013年「4Kフォーラム」としてスタートし、2015年には映画の上映を加えた「4K映画祭」に。その後、VR作品も網羅すべく2018年より日本初の4K・VR映像に特化した映画祭として、進化・発展してきた歴史がある。
映画祭の舞台となる神山町は徳島県中部に位置し、徳島市街から車で40分ほどの人口わずか4,500人あまりの町である。吉野川の支流である鮎喰川流域の山地で、山並みや渓谷がとても美しい静かなところだ。しかしながら、なぜこのような山奥の過疎地で、最先端の技術で撮影された映像作品をフィーチャーする映画祭が開催されるようになったのか?
神山町では、都市部との情報格差解消のため、2004年に四国で初めて、町内全戸に光ファイバーが敷設された。ケーブルテレビの世帯普及率は、昨年3月までの調査で、9年連続で全国で1位となっている。こうした背景から、快適なブロードバンド環境と豊かな自然環境が共存するこの地に、仕事と生活の調和を見出したIT系ベンチャー企業がサテライトオフィスを開設し始めた。
とくしま4Kフォーラム実行委員会の一員として、映画祭を運営する株式会社プラットイーズは、東京に本社があり、テレビ番組やCMなどの映像コンテンツに関する業務用システムの開発やコンサルティングを行っている会社だが、そのグループ企業である「えんがわ」も、2013年、神山に築90年の古民家を改築したえんがわオフィスを開所している。
また、認定特定非営利活動法人グリーンバレーでは、1999年より、毎年海外からアーティストを神山に招聘して作品作りを支援する国際交流プログラム「神山アーティスト・イン・レジデンス」(現在はコロナ禍で延期されている)を実施。コワーキングスペース「KVSOC神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」を創設するなど、様々な地域活性化のプロジェクトを立ち上げてきた。そのような動きに呼応して、やがて、県外からもクリエイターたちが移住してくるようになった。こういった経緯から、神山は今や地方創生のシンボルともなり、「4K・VR徳島映画祭」の成り立ちにも、このような背景があるのだ。