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ビールはその土地の文化を映す鏡だ。世界各地で醸造所が急増し、スタイルも多様化して、今やクラフトビールは百花繚乱。南アフリカの女性起業家が土着の穀物で醸すピルスナーもあれば、大気汚染と連動して価格が変わる中国のダブルIPAも。イギリスの専門家マーク・ドレッジの新刊から、おすすめの11種を紹介する。【写真】新時代のクラフトビールは見た目も個性的…ロゴやラベルの画像を見る『新しいクラフトビールの世界』ビールライターのドレッジが400を超える銘柄の魅力を解き明かす(ドッグン・ボーン・ブックス刊)01. スロー・プア・ピルス醸造所:ビアスタット・ラガーハウス米コロラド州デンバー原料となる麦汁を24時間以上かけて発酵タンクに仕込み、発酵に2~3週間を費やし、それから低温で6週間以上寝かせてようやく完成(「ラガー」とは低温で熟成させるスタイルを指す)。しかも、すぐには飲めない。店で注文しても、提供されるのに5分はかかる。グラスにゆっくり注ぐことでドイツ種ホップの香りをふんだんに含んだ泡が盛り上がり、炭酸が少し抜けて、モルトとホップのフレーバーが前面に押し出される。一口飲めば、待ったかいがあったと納得できる逸品だ。02. ホームスタイル醸造所:ビアーデッド・アイリス米テネシー州ナッシュビルホップをブレンドせず、アメリカ生まれのモザイク種のみを使ったヘイジーIPA(IPAはホップを大量に使用したビール)。最近話題のヘイジーは濁りが特徴だが、これは濁りが薄めで、トロピカルなアロマがはじける。オーツ麦が加えられているため口当たりは柔らか。後味はドライで、かんきつ類の皮の風味をかすかに感じさせる。03. ホップ・ド・リース醸造所:フゲテス・ペリディドスブエノスアイレス(アルゼンチン)ベルギーの酵母を使って醸すベルジャンIPAは、2010年代前半に大人気になった。今は数えるほどしか残っておらず、黄金色に輝くホップ・ド・リースはこのスタイルのかがみ。シャープな飲み口がベルギー酵母らしいスパイシーな後味を強調し、クローブを刺したパイナップル、ピーチ、バナナ、かんきつ類の皮が混然一体と香る。04. カタリーナ・サワー・サン・オブ・ア・ピーチ醸造所:セルベージャ・ブルメナウブルメナウ(ブラジル)2015年生まれの「カタリーナ・サワー」は、既にビアジャッジ認定プログラム(BJCP)で1つのスタイルとして認められている。ベルリン名物の白ビールを強めに醸造し、生のフルーツを加えて造る。草分けのセルベージャ・ブルメナウによるサン・オブ・ア・ピーチは、果実味たっぷりで甘酸っぱい。飲む人をわくわくさせるビールだ。05. ソピ醸造所:マルビッグレイキャビク(アイスランド)ヘイジーIPAにはフルボディーのものが多いが、このソピは飲みやすく、濁りも控えめで爽やかな味わい。レモンにピーチ、パッションフルーツ、ミカンが香る。雑味のない柔らかな口当たりで、水の清らかさが感じられ、さっぱりした苦みがいつまでも残る。このビールにキュッとレモンを搾り、新鮮なシーフードのグリルと合わせたら最高だろう。